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deep blue

親愛なるblueへ


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今日も雨が降り続いていた。
六月に入って十日目。
からりと晴れて青空は一度か二度見たくらいだろう。

天気予報でしばらく雨が続くとも言っていた。
教室も湿っぽい木の匂いが漂っていて、夏が待ち遠しい気がした。


学校が終わり、蒼(そう)は家へ向かっていた。家というべきかわからない代物だったが、生まれたときからそこしか知らない蒼にとっては、そこが紛れもない家だった。

「他の誰かなら、家族を知ってるのかな」

最早口癖のような独り言を、今日も呟きながら、歩き続ける。
すると、坂の上に、真っ白な研究室のような建物が見えてきた。
二階建ての白い建物。
そこが住居として機能しているとは、あまり思えないような外見だ。

蒼は家につくとすぐに、玄関横のパネルに手を当てた。これは出掛けるときにも行うことで、蒼を監視している施設が、蒼の外出を把握するためのものである。

もし、蒼が3日帰ってこなければ、蒼の首に埋められたチップが爆発して、殺されることになっている。
しかし、昔は三時間しか猶予がなかったのだから。それに比べれば、天国みたいだ、と蒼は思う。


「ただいま、」
誰の気配もしない家に蒼の声が虚しく響いた。
そして、急激な眠気に襲われる。

「お疲れ、蒼」

誰より愛しい人の声が、蒼の耳に届いた気がした。








蒼が目を覚ますと、テーブルの前に座っていて、そのテーブルには、湯気のたつ料理が並んでいた。

「碧(みどり)がやってくれたんだ...」

蒼はきちんと手をあわせてから、その料理を食べはじめる。
どれも温かく蒼の体に染み渡る。

料理を食べ終わり、蒼が幸せな気持ちに浸っていると、唐突に頭痛に襲われた。

「あっ..ぁ...」
部屋の様子はすべて、監視されているはずだが、今蒼に起こっている出来事は、彼らにとって喜ばしいことなので、放置される。

「交代だよ、蒼」

底冷えのする声がして、蒼の意識はブラックアウトした。



目を覚ますと、家の中がぐちゃぐちゃだった。
でも、衝動的ではなく、計画的な荒し方。

「誰がやったんだろ」

蒼の中には三人の人格がいる。
蒼、碧、青。
この荒しは確実に青の仕業に他ならないが、青だけは他の二人とは違う事情を持ってる。
青の中には、7人分の人格があるのだ。それが日々割合を変えて、青を形成している。


いつからだったのか、そんな奇妙な人間になってしまったのは。
何度も考えるが、蒼の中で答えが出たことはない。


ただ、碧は蒼を愛し、青が蒼を殺したいと願っていることは知っている。

「リストカットなんて、俺はしたことないのに」
知らない間に増えていく手首の傷が、青の緩やかな殺意を象徴している。








「どうして、蒼にあんなことする?」
「嫌いだからだよ、それ以外に理由がいるの?」
青の返事に、碧は苦虫を潰したような顔をした。

「お前だって、蒼のこと、ムカつくとかずっと言ってたよね?」
青は嘲るように、碧を笑う。

「都合がいいことこの上ないよ」

青の言葉に碧は真っ直ぐといい放つ。
「だって、好きになってしまったんだから、しょうがない」

碧が放った予想外の台詞に、青は一瞬面食らったような顔を見せたが、すぐに狡猾な表情に戻る。
「へぇ、じゃあ競争しようか。俺があいつを絶望させて殺すのが先か、お前と愛し合うのが先か」


ひとりに3人の歪んだ彼らは、今日も自分達しかいない深い青のなかに溺れている。

end










はい...ちょっと意味わからなすぎて、わからないですね笑
短編にしたのがだめだったかな...
精進します。
青には蒼への恋情は皆無です。





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