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あいみての1
逢いみての のちのこころにくらぶれば むかしはものをおもはざりけり
(出会ってから思えば、あの人とで会う前の自分が思っていたことなんて、なにも思っていないのと同じようなものだった...)
峰燃大学競技かるた部
毛筆で書かれたその看板を見つけて、江東 恵(えとう めぐみ)はその中を伺った。恵といえ名前ではあるが、れっきとした男である。
彼がここにやって来たのは、思いこがれるミス峰燃の筑波 実乃絵(つくば みのえ)先輩がこの部活に入っているからだ。
「──あいみての」
ダンッ!
声のあとに、畳を叩くような音が聞こえた。
恵はそれに驚いて、転んでしまった。
恵が立てた音に、部屋にいた10人程度が一斉にこっちを見る。
「恵くん!?」
正座をして相手と試合をしていた様子の実乃絵が驚いたように声をあげる。
「実乃絵先輩...」
「きゃー!恵くん!見学に来てくるたのね!」
ゼミの先輩である実乃絵に勧誘されていた恵だが、特に競技かるたに興味があったというわけではない。
しかし、こう言われれば、うなずくしかなかった。
うれしそうな実乃絵とは正反対に、恵に対して舌打ちをしてきた男がいた。
「もう!山瀬くん!」
「...試合中に音立てる奴なんてありえない」
小さな声だが、恵にははっきり聞こえ、少し腹が立つ。
「えっと...彼はわたしと同じ二回生の山瀬玉緒(やませ たまお)くん」
「よろしくおねがいします!山瀬先輩!」
バスケ部仕込みのあいさつをすると、山瀬は怯んだように顔を逸らし、また札に向かった。
「筑波、やるぞ」
恵はそれを見て、満足そうに笑った。
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