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俺の目は、世界の色を写さない(後輩×色盲先輩)
(年下攻め)



俺の目は、世界の色を写さない。

色覚異常ってやつだ。
男だとクラスに何人かは、それを持っているらしいが、俺みたいに全部モノクロってのは珍しいらしい。

だから、俺は色がわからない。

「せーんぱい」

だから、このうざったらしい後輩が、いくら美しい金髪碧眼を持っていると言われても、俺はそれがよくわからなかった。

濃淡の判断はできるから、薄いなぁくらいは思ったけど。

「先輩、なに読んでるの」
「こころ」
「漱石?」
「あぁ」






先輩はいつも本を読んでいる。そりゃ、文芸部員としては正しい姿かもしれないけど。

先輩曰く「本は白黒だから」ということらしい。

「ねぇ、先輩知ってる?」
「なにを」

本に吸い込まれている先輩は、ろくな返事を返してくれなくなった。

「きみ、恋は罪悪ですよって」
「...こころのフレーズか」

もう何回も読んでいるのだろうか、すぐに当てられた。

ねぇ、先輩。
恋が罪悪なら、先輩に恋してる俺は罪悪なのかな?

そんな言葉を飲み込む。

目のせいか、自分の世界に籠りがちな先輩が、やっと俺には心を開いてくれたのに、それを無駄にはしたくなかった。

「ねぇ、先輩。映画見に行きましょうよ」
「やだ」

即答された。

「だって、お前が見てる色が俺には見えないから。お前が見てるものとおなじものが、映画でくらい、見たい」

先輩の言葉に赤面しそうな熱を、どうにか押さえる。
無意識でいってんだから、恐れ入る。

「そっか、ごめんね、先輩」
「ん」

俺が頭を撫でると、それに甘えて頭をすり寄せてくる先輩、かわいい。




数日後、俺は映画券を握って部室に訪れた。
「先輩、映画見に行きましょうよ」
「だから...」
「これ、モノクロ上映なんで」
つきつけて、有無を言わさず約束をとりつけた。



俺がわざわざモノクロ上映の映画を探した意味。
その映画で、色盲の少年と少女が結ばれる意味。
本なんて読まない俺が文芸部に入った意味。


そのすべてに先輩が気づくまで、あとちょっと。

END





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