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あまねく愛と言うものは!
クール殺人鬼×平凡


その日、階人はいつも通り、夕方五時に家を出て、職場である音楽バーclassicalに出勤した。

ただ、いつもと違うのは最愛の恋人が来ていること。

「奏!」
カウンターに入った階人はすぐに、目の前に座った奏のところへ向かう。

「こんばんは、階人」
「今日来てるってことは、家に帰ってくるの?」

階人が問うと、奏は小さく頷く。
「あぁ、帰る。階人が終わるまで待つから一緒に帰ろう」

奏の言葉に、階人はうれしそうに笑みを返した。
楽しそうに階人がお酒を作っていると、そこにこのバーの店長、姫宮が現れた。

「姫、ひさしぶり」
姫なんて呼ばれているが、れっきとした男である。姫感もほぼゼロだ。

「あぁ、奏。階人がうれしそうにしてるから、何かと思ったらお前か」

その時点でリア充鬱陶しいと思った姫宮は、普段より一時間もはやく、階人を帰らせたのであった。



「かいとー」

煙草を加えたままの口で、器用に奏は名前を呼ぶ。
「んー?」

それに答える階人の声は、心なしか弾んでいる。それも仕方がないだろう、一ヶ月以上奏は家を留守にしていたのだから。

「なぁ、階人。手ぇ繋ごっか」

奏から差し出された手を、階人は迷いなく取る。奏はそのことに安堵して、ゆっくり煙を吐いた。

このふたりは、男同士であることを除けば、ただの仲の良いカップルに見える。
だが、ふたりには、というより奏には一つ、とんでもない秘密があった。

「階人、今回の仕事で五人殺したよ」
奏の言葉で、階人は身を固くした。それは奏に筒抜けだ。

「そんな汚れた手で、俺はお前を触ってんの。どう?」

奏の言葉に、階人は慎重に答えた。

「それでも、俺は、奏が好きだよ」

奏が完全に怖くないかと言われれば嘘になる。でも、あれが階人の一番素直な気持ちだった。

繋いだ奏の手が、一層強く階人の手を握った。
「愛されてるー俺」

そう呟いた奏の煙が、ゆっくりと夜闇を漂った。


...end

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あきゅろす。
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