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Alpha dog4
死にそうになりながらライブをやりきって、そのあとは、その日一緒に出た他のバンド、たぶん4組くらいと打ち上げにいった。
安くてボリュームのある、居酒屋。貧乏なバンドマンにはありがたい店だ。
でも、俺は他のみんなと騒ぐ元気なんて残されてなくて、一番隅の三笠の横で、たまに飯やチューハイを口に入れつつ、ぐったりと寝ていた。
「広田さん」
しかし、十分に休むことは出来ず、誰かに声をかけられた。寝そべったまま返事をするのもどうかと思ったから、仕方なく、座る。
「どうも」
「俺、今日『GRAVITY』でドラム叩いてた辻亮也です」
俺より三歳くらい年下に見えるやつが、目を輝かせて、隣に来た。
「あ、俺は『cold whale』の広田」
「知ってます!俺大ファンなんで」
「えっと...あ、ありがとう」
「いえいえ。あの、ちょっとだけでいいから、隣で話とかさせてもらってもいいですか?」
「いいけど、おもしろい話とか、できんけぇ」
「大丈夫です!あの、もしかして広田さんて地方出身なんですか?」
辻に指摘されて、驚く。訛りなんて滅多に出ないのだ。
「あーうん。そう。大学でこっちきて、大学行きながらバンドしょーる。あ、ごめん、アルコールはいると訛るのかも」
「全然訛っちゃってくださいよ、かわいいですよ?」
男に可愛いなんて言われて、不覚ながら赤面してしまう。三笠に言われたときのうれしい赤面とは違って、ひたすら恥ずかしいだけだけど。
「そういうお前は、このバンド今日だけなん?」
「え?」
「だって、今日『GRAVITY』でって言ってたから、今日以外は違うのかなって」
すると、辻は目を丸くして、大きくうなずく。
「えぇ、そうです。俺バンドには入ってないんで。でもギターの奴とダチだから、今日は助っ人」
そのあとの飲み会は、アルコールのペースを落としながら、辻と話をたくさんした。
意外とドラムのやつと話ができる機会は少なくて、ついつい会話が弾んだのだ。
人見知り気味の俺からすると、だいぶ珍しい。
打ち上げのあとは、千鳥足の俺を支えて、三笠が部屋に連れ帰ってくれた。
あいつはザルだから、いくら飲んだって潰れない。そういうのかっこいいから、ちょっと憧れる。
でも、三笠曰く、酔えないっていうのは嫌なものらしい。
夜の涼しい風の中は、火照った体だから余計に気持ちがいい。
玄関のドアを閉めるとすぐ、口づけられた。
「んっんっ」
全て食べられちゃうんじゃないかってくらい、深いやつ。
三笠と違って恋愛経験皆無な俺は、ただされるがまま。
「ねっ...みか、さぁっ...」
「何?」
ドアのところで、ズボンの上から、ブツを触られ、さすがにまずいと声をあげる。
「あんね、ベッド..行きたい」
「うーん、どうしよ。俺今ちょっと、意地悪な気持ちなんだよねぇ」
「何でも、言うこときくけん...お願いっ」
すがり付くようにして頼むと(腰が砕けそうだったのもある)、案外あっさり三笠はうなずき、俺の体を持ち上げた。
「吉野動かないの」
「おひめさまだっこ、や」
「だぁめ。大人しく連れていかれなさい」
戯れるようなキスを額に落とされて、俺は寝室へ連れていかれた。
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