短編 3 「み、水上ぃ」 20分後、地面に膝をついたまま、顔を上げた。小田は泣き出しそうな(泣いたのかもしれない)ぐしゃぐしゃな顔をしてた。 「………つかれた」 「お前、すげぇよー…」 小田が鼻をすすりながら周囲を見渡す。何ていうんだっけ、こういうの。死屍累々?5、6人のヤンキーどもが、周囲には倒れてる。 「すげぇ、けど、よくあるのか、こういうの…水上先輩は?知ってんの?」 知るわけないだろ。兄貴が知ったら、きっとすごく悲しむ。それくらい分かってる。 小田が差し出してきた俺の上着とカバンを受け取りながら、唾を吐く。くそ、軽くだけど、二発食らった。口の中が切れたみたいで、唾は真っ赤だった。それを見て小田は真っ青になる。 「………こんなん危ないよ、水上」 分かってる。だけど、やめるつもりはない。 「兄貴から電話が来た時」 ぽつり、言ってみる。小田は泣きそうな顔のまま、珍しく黙った。 「明るい声だった。俺の心配とかしてきて、さもこっちは楽しくやってるみたいな」 いっぱい無理をして言ってると、 すぐに分かった。 「それがむかついて仕方なかった」 兄貴、なぁ。 俺もうこんなに強いんだよ。自分より体の大きい奴だってぶっ飛ばせるようになった。兄貴のこと悪く言う奴やいじめる奴は倒してやる。もう昔とは違うよ。 だから、 「兄貴に頼られたいなら素直に言えばいいのに…」 小田がぼそりと吐いた言葉に、俺は奴を睨み上げた。 「うるせぇ。爆発しろ」 「ひでー」 「………それができたら苦労しねぇ」 「さいですか」 小田がむかつく顔で笑う。 空がバカみたいに青かった。 そうしてこの日の夜、四人組のやっぱり下品なヤンキーどもが家に押しかけてくることになるのは、また別の話だ。 2013.5.23. Happy birthday ODA ! 2014.7.5.編集 [*前へ] [戻る] |