短編 2 「おい、こら待てやァ!」 小田の表情が何故か固まった。後ろの罵声の元を振り向く。ガタイの良いのとか髪の茶色いのとか、隣の中学のヤンキーどもがバットとか持って並び立っていた。 「み、水上、知り合い?」 小田の声が震えてる。知り合いではないけど、最近ケンカした奴の仲間かもしれない。奴らは下品なにやにやした笑みを浮かべながら、無様に丸まった背骨をさらに丸めて、がに股で俺に食ってかかってくる。 「てめぇが水上雷かコラァ!」 「この間俺らの仲間が世話になったらしーじゃん」 「うひゃ、なにこれかっわいい、ヤッちまおーぜぇ!」 やっぱりか。むかつきが募るのといっしょに、血が冷えてく感覚が分かる。 「小田、持ってろ」 「え、え?水上?」 カバンと学ランの上着を小田に押し付けて、軽く手首を振った。 ふぅ、と息を吐く。兄貴を思い出して背筋を伸ばして、すっと下半身を沈め、拳を構えた。 「やっちまえぇ!」 奴らが狂ったようなめちゃくちゃな動きで襲い掛かってきた。拳を握る。 あーーーくそ! 会いてぇ!死ぬ! [*前へ][次へ#] [戻る] |