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番外編
2





そしてその日は腹が立つ程すぐにやってきた。






扉がノックされる音を、俺、水上雷はベッドに寝転がったまま無視した。
知るか。うぜぇ。開けねぇよ。

「雷?長雨もう行っちゃうよ?」

母親が扉の向こうで喚く。
勝手に行け。バカ兄貴、クソ兄貴。

「もうあんたは!」

何度かノックして諦めたらしい。母親が階段を降りていく音が聞こえる。

「………………」

イライラする。バカじゃねぇの。何が編入だ。
それもこれもあのクソ教師のせいだ。教員のくせに生徒が友達だって、ショタコンなんじゃねぇの。


…俺の兄貴になれなれしくしやがって。くたばれ。

大体、兄貴も兄貴だろ。あいつに言われてホイホイ編入だなんて、騙されてんじゃねぇのか。



またノックの音がした。しつこい。寝転がったまま枕を扉に放り投げた。ばすん、という鈍い音を立ててぶつかって、床に落ちる。

「雷、枕は投げんなよ」

笑いを含んだ声にガバッと起き上がる。兄貴の声だった。

「お前な、母さんの事ちゃんと大事にしろよ。口喧嘩はいいけど物は投げんな」
「……………」
「喧嘩したらちゃんと謝ること。母さんは絶対譲らないんだから、お前が折れとけよ」
「……………」
「家事もちゃんとやるんだぞ。下にやり方のメモ残しといたから後で見とけよ」
「……………」
「じゃ、しばらく会えないけど元気でな」
「……………!」

思わずベッドを飛び下りて、扉を開けた。兄貴はそこに居た。俺を見てにっと笑う。死んだ父さんによく似た笑顔だけど、兄貴の方がかわいい。

「出て来たな、悪ガキめ」

顔を見て、頭を撫でられたらもうダメだった。視界が滲む。


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あきゅろす。
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