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番外編
2
長雨にこの学校を薦めた時、当然何度か下見に来たのだが、やはり何度見ても思う。


「でかいな」


そびえ立つ門。その向こうの城のような校舎と寮。このことは長雨には教え忘れたのでさぞかし驚いただろう。
『白虹学園』と書かれた表札の前でしばし佇む。思わずため息が出た。


華の土曜日。電車で片道二時間の道程を車で走り辿り着いたのは、元生徒にして親友の通う全寮制男子校だ。インターホンを押せずに考え込んだ。別に急ぎの用でもないのに、どういう訳か気が急いて、電話するのを忘れてここまで来てしまった。長雨は今日俺が来ることを知らない。


『あんた誰』

突然ドスの利いた声が響いてぎょっとする。顔を上げると、目の前のインターホンに設置されたカメラと目が合った。

『変態さんならお引き取り願いたいんですけど』
「変態…」

に、そりゃ見えるよな。男子校の門の前にぬぼーっと立ってりゃあな。

「いや、失礼しました。私先日こちらに編入した生徒の元担任なんですが、ちょっとその生徒に渡したいものがありまして…」

嘘じゃない。手にした紙袋の中にはある奴らに頼まれたものが鬼のように詰まっている。死ぬ程重かった。

『アポは』
「…とってないんですが」
『駄目駄目。そういうのは郵送で頼みますわ』
「そこを何とか」
『あのね、あんた良い歳みたいだし、分かるでしょうが、アポくらいとらなきゃいけないの』

分かってる。けど、どうしようもない衝動っていうのは人間誰しもあるもんだろう。そんな事言ってるとますます変態くさいだろうか。
仕方ない。今日は帰ろう。阿呆か俺は。やっぱり最初から電話にすればよかった。

『…あれ、ちょっと待てよ』

踵を返したところでインターホンから男が何か思い出したような声を出す。

『あんた、今“編入生の元担任”っつった?』
「はぁ」

もう一度振り返った。

『名前は?』
「水上長雨」
『ああ、ナガメちゃんの』

…ナガメちゃん?

『門は開けてやれねぇけど、それでもいいなら呼ぼうか』
「…お願いします」



どういうことだ。






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あきゅろす。
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