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番外編
5

俺にもこいつを払う理由が見当たらない。
何となく、肩に乗った顔を見る。
閉ざされた瞼を縁取った睫毛が影を落としている。小さな鼻。少し厚い唇。

目を開けている時はどちらかと言えば凛とした印象が強かったが、こうして寝顔を見るとひどく童顔だと思う。肌が赤ん坊のようにきめ細かい。それで余計そう思うのかもしれない。

『兄ちゃん』と水上は言った。とすると、『らい』とは弟か何かか。

寝ぼけて思わず口に出る程、日常的に弟に食事を作っていたのか。成績も上位に保ち、友人に微笑み、図書館の受付にまできっちりと挨拶をして、あんな風に、家族の名前を呼ぶのか。








『おいで』






あんな風に、







寄り掛かる水上の体は温かく、徐々に俺の体にも熱が移ってくる。こんなにも体温が違うのは何故だろうか、と疑問を抱き、食事の違いかもしれない、と思う。

視界が狭くなる。自分も眠くなったのだと知る。その感覚に任せて、水上の頭に自分の頭を寄せる。本の香りの中に、シャンプーの香りが微かに漂う。

手が温かい。














水上が目が覚ましたら、

料理の本を見繕ってくれと頼んでみようか。








2008.4.27.

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あきゅろす。
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