[携帯モード] [URL送信]

番外編
4

ふむ、と思った。
俺もそろそろ、黒石に心境の変化があっていいと思っていた所だった。だが、いかんせん相手がな、と思っていたところに、黒岩の一言だった。




『市村、野菜分けてやりたい奴がいるんだけど、いいか』




その瞬間、水上長雨、もとい『水下長雨』が誕生したってワケだ。






自分で言うのも何だが、俺ゃ多趣味だ。趣味なんて星の数程あったとしても、門番やるにはまだ足りねぇ。畑作りも暇潰しの一つだった。食費も浮く事だしな。

「よっし」

たどり着いたのは校舎裏の畑だった。学園長の諏訪原カイ、通称カッちゃんとはそれなりな知り合いだ。でなきゃ俺みたいな見るからに怪しい奴は一秒だってここには居られねぇだろう。ま、そんな訳で、スペースを確保するのには大した労力はいらなかった。

「んじゃ、長雨ちゃんには芽の間引きしてもらうかな」
「間引きって…小さな芽を抜くんですよね」

おりょ、現代っ子にしちゃ良く知ってんな。


「そ。細いのとか小さいのに養分やってるとでかいのが良い苗になんねぇから。今小指より小さいのは全部抜いちゃって」
「はい」
「クロ、てめぇもやれ」
「分かってる」

クロは眉を少しだけ寄せてため息をついた。かわいくねぇ餓鬼。まぁそこがおもしれぇんだが。

「くろ…」

水上ちゃんが驚いたツラして俺を見る。

「良いあだ名だろ?水上ちゃんも使いな」
「よせ、市村。水上、無視していいからな。早くやろう」

クロに促されて、水上ちゃんは作業を始めた。しっかし、ほんと意外だな。こいつが誰かとナカヨシコヨシになるとは。

水上長雨、か。
簡単な個人情報は一応見た。
超一般家庭出身。
容姿、普通。
体格、普通(ちょいヒョロめ)。
オツム、特A。
運動神経、ゼロ。
家族、母親と弟。
父親、一年前に事故で他界。
だったか。

まぁ、確かにクロと似た部分もあるっちゃあるが。一応このバカもガタイとツラだけはまぁまぁ良いんだから、もっと他に色々居ただろうに。




俺ゃ、リアリティは追及するタイプだ。『水下長雨』も美少年じゃねぇ。どうせファンタジーだし、かわいこちゃんであるにこした事はねぇだろうけど。



[前へ][次へ]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!