番外編
3
「じゃ、頼むな」
若干不安だが、まぁ様子を見よう、
というのが見え見えだった。
自分達が教師に良く思われてない事はよく知ってる。
「宮城タッパあるな」
脚立を差し出されて思わず受け取った。黒い目と髪の生徒。斉藤はこいつをミナカミ、と呼んだ。
思い出した。確か、ミナカミナガメ、だ。天才だとかいう噂の。
「身長いくつ?」
脚立を棚の前に置いて、のぼり始める。
「………179」
答えると、おーっ、と、水上は声を上げた。すごく普通な反応だった。
「何食ったらそんな伸びるんすか」
「水上、お前宮城より10センチ位低いんじゃないか」
斉藤が笑いを堪えるように言った。少し妙だった。
ミナカミ、と呼ぶ声に微妙な違和感があった。真帆がうちに来て『慎くんいますか』と訊く時みたいな、こそばゆい雰囲気だった。
「失敬な。9センチですよ。この間170いきました」
ちらりと水上を見てみる。田坂ほどじゃないが、細いからか、身長よりも小柄に見える。
棚の上の段ボールを取って、下にいる水上に差し出した。
「ありがとう」
水上はよいしょ、と、その段ボールをテーブルに乗せる。それを何度か繰り返して、棚の上が何もなくなってから脚立を降りた。水上は俺が下に降りるまで脚立を支えていた。
「すごい量だな」
机の上には段ボールが6つ。一端脚立を畳んで棚に立て掛ける。
「先生、何部必要ですか?」
「30頼む」
「はい」
水上と段ボールを三つずつ分けて、予備も含めて35枚ずつプリントを出した。とりあえず段ボールは棚の近くに置く。それから椅子に座って、それを冊子に出来るように、二人で手分けして半分に折っていった。
「……………」
「宮城」
「…………?」
「宮城んちってどこだっけ?」
また驚いた。沈黙だろうとばかり思っていたのに。
世間話する気か、こいつ。
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