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番外編
大切なもの






「宮城」



驚かなかった、と言えばそれは嘘だ。







「あれ…宮城、で合ってるよな?」

放課後に突然話しかけてきた黒髪のクラスメイトは焦った表情になった。頷く。奴はほっとしたように笑った。
顔は知ってる気がする。名前は分からない。

「ちょっと一緒に来てくれないかな」
「何だ」

こういう『呼び出し』はそう珍しくはない。今日は真帆は休みだし、中野と田坂はいつも通り屋上でサボりだ。リンチにするには丁度いいだろう。だが、上級生に頼まれたにしては、やはり声に怯えがなかった。

「斉藤先生に頼まれごとしてさ。背があるやつがもう一人欲しいんだって…………って、そんな怖い顔するなよ、宮城」
「してない」

よく言われる。俺の顔は怖いのだそうだ。目付きが悪いのと、生まれつき異様に色素が薄いのが原因らしい。子供には泣かれる。犬には黙られる。

「あ、そうか?じゃあ地なのか。ごめんな」
「…………」

失礼と正直の境をいくような言葉だった。あっさりし過ぎていて悪意のかけらも感じさせなかった。

「何か用事あるか?だったら他の奴に頼むけど」
「………別にない」
「じゃあ、頼む」

席を立った。断る理由は何も無い。

「どこだよ」
「多目的室。ありがとう。助かるよ」

笑って礼を言われた。




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あきゅろす。
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