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白虹学園
4
おにぎりを口に運ぶ。カチッ、と、ジッポで火をつける音がした。ちらりと横目で見る。銀のジッポにタバコを寄せる仕草がひどく様になってた。ジッポにはドクロの凝った装飾。かっちょいいな。
パチン、とジッポを閉じて、ふーっと、ルームメイトは煙を吐き出す。

「…………何でバラさねぇ」

しばらくして、ぼそり、独り言みたいに高見沢が呟いた。見ると、焦げ茶の瞳はぼんやり空を見上げていた。俺が知ってる高見沢の秘密なんて一つしか無い。親父さん、学園長のことだ。

「バラさないといけないのかよ?」

逆に質問してみると、高見沢ははっ、と鼻で笑う。

「情報屋とつるんでるなら分かるだろうが。こんな金になるネタねぇだろ」
「へぇ」
「バックレんな」
「いや、知らねぇし。佐助とそんな話しないから」

高見沢が疑わしげな目を向けてきた。というか、こいつまで佐助の事知ってるっていうのにこっちはびっくりですよ。

「佐助と話すことっていったら宿題やったかーとか昨日あのテレビ見たかーとか今日夕方から雨だってさーとかあのタレントおっぱいおっきいよなーとかそんなんだって」
「………嘘こけ」

指折り数える俺を疑いながらも、高見沢の目が少しだけ丸くなった。

「本当本当。だからバラして俺に得は無いわけですよ。綾先輩を殴られたら困るし、おっかないルームメイトの恨み買いたくもないしな?」

高見沢が一瞬、目を瞬かせた。笑ってみたら、はっとしたように目を逸らされた。そっけないですね。

「誰にも言わないよ」

小さな子供が約束をするみたいに言った。高見沢はあんまり迫力の無い舌打ちを一つした。信じてくれたかな。



それからしばらく、沈黙が続いた。高見沢がどう思ったかは分からないけど、俺にはあまり辛い沈黙じゃなかった。
タバコの煙を青空にくゆらせる高見沢の隣りで、俺はただおにぎりをむぐむぐのんびり食べていた。

ぽかぽかあったかい。ひなたぼっこにもってこいの気候だな。
ピチュピチュ、と、どこかで鳥の声がする。青い空と白い雲。
平和だー。



今度、佐助の分も弁当作って誘ってみよう。





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