白虹学園
3
見ると、高見沢は何故か忌々しそうに舌打ちをして、さっさと腰を上げようとした。でも、
「…っ」
呻いて、立ち上がるのに失敗した。おいおい。
「大丈夫かよ」
苛立ったように、高見沢がもう一度舌打ちをする。こっちは見てくれない。
「どっかケガしたのか」
足を握ろうとした手を思いきり払われた。
「触るな」
猛犬みたいな目で睨まれる。いや、触るなって言われましてもねぇ。
「痛いんだろ?」
「ほっとけって何度言ったら分かんだよ。そろそろマジで犯すぞ」
「………いや、今ならむしろ俺が襲えそうじゃねぇ?」
高見沢が思わずといったように、ひくっ、と目の下をひきつらせた。
「気色悪ィ事言うなてめぇ…!」
「………すみません」
自分より遥かにガタイの良いおにいちゃんを組み敷く自分の姿を想像して、俺もうげぇ、という顔になる。でもお互い様だろそれー。
「分かった。じゃあ触らないしほっとくから、休んでろよ。無理に立ち上がらない方がいいだろ」
「………………」
高見沢はしばらく俺を睨んでいたけど、少しして視線を逸らした。でも、痛みを堪えるようにふーっと息を吐く様はどう見ても辛そうだ。なんだかソワソワする。手当てしなくていいのかなぁ。骨に異常あったら大変だし、捻挫とかでもほっといたら後々良くないだろ。
「メシは食った?」
「………あ?」
「よかったらおにぎり食う?中身シャケな」
アルミホイルの包みを一つ差し出す。高見沢は一瞬目を見開いてそれを見つめて、ふいと目を逸らした。
「………いらねーよ」
「そう?腹減ったら言えよ」
何も言わず、奴はそっぽを向く。世の中の全部を拒否したみたいなその態度はいつも通りだけど、いつもより威勢が無い。ケガしてるからかな。
パリパリとアルミを破って、おにぎりを取り出す。また向こうを向いてしまった高見沢がタバコの箱をポケットから取り出している。煙で腹いっぱいになる訳じゃないだろうよ。
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