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白虹学園
2

えーと、どこか座りやすそうなところはと。
辺りを見回すと、扉の左横に貯水タンクが目に入った。あのあたりにしようかな。

何の気なしにタンクに近付いて、回り込んで、目を丸くした。


まあ、見慣れた先客が。


金の短い髪が太陽の光を浴びて、きらきら光っていた。
たくさんのピアス。
投げ出された長い脚と、ぐったりと腹の上に乗った腕。
雑に緩められたネクタイ。
目付き最悪のはずのルームメイトが、まぶたを落として背中をタンクにもたれかけていた。

「高見沢…」

本当こいつとはよく会うなぁ。部屋だと全然会わないのに。行動パターンが似てるんですかね。

寝てんのかな?

起こさないようにそろそろ近付いて、一人分くらい空けた隣りに座った。やっぱり眠ってるな。いつからここにいるんだろう。メシ食ったんだろうか。
弁当袋からアルミホイルで包んだおにぎりを取り出しつつ観察してみる。
ああ、また傷が増えてる。せっかくキレーな顔してるのに勿体ない。ケンカだろうなぁ。制服泥まみれだし、口の際が切れてる。まだ新しい傷だ。




……………まさか、








まさか、意識ないんじゃ、







「た、高見沢っ、」

慌てておにぎりを置いて近付いて、名前を呼んでみる。反応が無い。ぎゃあ!

「高見沢!おい!こら!」

肩を掴んでばしばし頬を叩く。無駄に命を落とすな若者よ!






ぱしっ






突然、右腕を掴まれた。目の前のまぶたがゆっくりと開いて、凶悪かつ超不機嫌な焦げ茶の瞳がお目見えした。

「またてめぇか…」

わー、ははは、蚊かハエくらいなら殺せそうな重低音ボイス。

「いや、ごめん、死んでんのかと思って…」
「ああ゛?」
「わー悪かったって!だって傷だらけでぐったりしてる奴がいたら心配になるだろ!?」

頼むから腕は折らないでください!と叫びそうになったところで、ぱっ、とその怪力な右手が離れた。あれ?



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あきゅろす。
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