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白虹学園
3



ああ、そうか。


「だから、水上は俺たちと付き合った方がいい。お互い刺激して成績も向上できる。いい考えだろ?」

一之瀬の笑顔を見つめて、俺も笑んだ。

「誘ってくれてすごく嬉しいよ。ありがとう」
「じゃあ…!」
「でも、」

言った。




「俺は佐助が好きだから、佐助の悪口を言うような奴とは一緒にいられない」




一之瀬の笑顔が凍った。
佐助に言われたことが分かったような気がした。
一之瀬と同じ考え方の生徒が大勢いるんだとしたら、間違いなく佐助にとっては『全員敵』だ。

「………べ、つに悪口って訳じゃないだろ。事実を言ったまでで…」
「じゃあ一之瀬は誤解してるんだな。佐助は俺なんかよりよっぽど頭が良いよ。家柄がどうかは知らないけど、すごく良い奴だし」

一之瀬の表情がみるみるかたくなっていくのを、俺は気付いていた。でも続けた。

「一之瀬が佐助を紹介してくれって言うなら喜んでそうする。でもお前の今のアドバイスは聞けない。悪いな」
「………そうか」

完全に無表情になった後、一之瀬は何事も無かったみたいに笑った。

「分かった」

くるりと踵を返す。武田がおろおろしながら、俺と一之瀬を交互に見てる。

「行くぞ、武田」

一之瀬は振り返らないで言った。武田がびくっと肩を震わせて、一之瀬についていこうとして、でも一度だけ俺を振り向いた。

しゅんとしたようなその表情に、俺は一瞬目を丸くした。笑って手を小さく振る。武田は手を上げようとした。でも下ろした。唇をぎゅっと噛んで一之瀬を追っていった。

ふー、と、思わず息を吐いた。と同時に、ひゅう、と口笛が隣から聞こえた。見ると、大牙が一之瀬達の方を見ていた。

「悪い、聞こえちまった」
「あはは、よろしくてよ」
「あんまり良い断り方じゃなかったな」
「そうですよねぇ」

だけどもしもう一度チャンスがあったとしても、多分俺は同じ事を言うと思う。

「でも、よく言ったな」

目を見開いて大牙を見る。大牙は俺を見ないままだった。でもいつも屈託なく笑う奴の横顔が、あまり見た事無い優しい表情をしてた。
俺も笑う。



「ありがとう」



でも、佐助がさっきの聞いてたら、きっと怒っただろうなぁ。





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あきゅろす。
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