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白虹学園
2

名前を呼んでみると、彼はびくっと体を揺らして俺を見たり目を逸らしたりした。と言っても、厚い眼鏡で瞳がどこを向いてるかはっきりとは分からないけど。

「さすが。よく覚えてるな、水上」

いや、佐助に教えてもらったんだけど、と言おうとして、何となく思いとどまった。言わない方がいいような気がした。
一之瀬がにこりと笑う。

「こいつさ、きみの噂を聞いてからいつも以上にすごく勉強してたんだ。今回同着で嬉しかったって。きみと仲良くしたいらしいよ」
「い、一之瀬」

武田くんが初めて声を出した。オロオロしたような感じだったけど、良い声だった。

「何だよ、ホントの事だろ?なぁ、水上、だから仲良くしてやってくれないか?」
「あ、おう。もちろん」

頷くと、一之瀬は自分の事みたいに喜んだ。

「やったじゃん、武田。ほら、握手」

一之瀬がもじもじしている武田くんの背中を押す。俺から先に手を出すと、しばらくその手と俺の顔を見比べた後、武田くんはゆっくりと俺の手を握った。触れたって言った方が近いかもしれない。指にほとんど力を込めない握手に、笑顔を返す。

「よろしく、武田」

その一瞬、眼鏡の奥の瞳と、かっちり目があったのが分かった。

「………よろ、しく」
「良かったな、武田」

武田はもじもじしながら、また一之瀬の後ろに隠れてしまった。一之瀬が俺の方を見て苦笑する。

「ごめん、水上。こいつ人見知りあるらしくて。とにかくよろしく」

一之瀬も手を差し出してきたので、笑って握手した。

「…実はさ、前から話したいと思ってたんだけど、浅野がいたから近付けなかったんだよな」
「え?」

一之瀬ははにかむように笑いながら言った。





「正直、水上に浅野はふさわしくないと思うんだ」





何を言われたのか一瞬よく分からなかった。

「…………へ?」
「だって浅野ってそれほど頭がいい訳じゃないし、家柄も良くないし、第一、情報屋だろ?俺も何度か買ったことはあるけどさ…付き合うなんてやめた方がいいよ。いつ売られるか分かったもんじゃないしさ。今日は休みみたいだな?お陰で水上に話しかけられて助かった」


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