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白虹学園
お誘い

「おは」


よう、と言うより前に口が硬直した。垣代早瀬の真っ黒な眼が俺を見下ろして、少しだけきょとんとする。俺の頭の中に友人の声が響く。



『無闇に関わるな』



「………おはよう、垣代」

挨拶をした。垣代がじっと俺を見つめる。

「………………おはよう」

挨拶してくれた垣代に笑みを返す。彼はしばらく俺を見てから、ふいと視線を逸らして自分の席の方へ歩んでいった。

佐助さん、無闇じゃない関わり方の区切りが分からないよー。でも毎朝の挨拶だし、これくらいはいいよな。

「おーす、水上」
「お、おはよう、大牙」

隣の席にどさっと荷物を置いた大牙にも挨拶する。いつも通りの朝みたいだ。けど、窓際に目をやる。いつもの席に佐助はいない。

「見たぞ、掲示板。おめでとう」
「ああ、ありがとう。あぶなかったけどなー」

大牙にパンダみたいな笑顔を見せられて、少しだけ気持ちが和らいだ。

あの後、佐助は背中を向けたままで「今日サボるわ」と呟き、寮の方に戻っていってしまった。何がどうなってるのかは分からないけど、『全員が敵だ』と言っていた佐助自身にすら避けられているような気がしたのだけは確かだった。

何か理由があるのかもしれないけど、

「うー」

寂しいなぁ。



「水上」

はっとして顔を上げる。机の前にすらっとした男が立っていた。茶色の髪。優しげに細められた目。

「えーと…一之瀬?」

笑って男が頷く。一之瀬六。4位だった奴だよな。佐助も言ってた。

「実力テストの結果、見たよ。すごいな。完全に負けたよ」

すげぇ。頭を掻きながら苦笑する姿がむちゃくちゃ爽やかだ。韓流スター顔負け。サッカー部っていうのもなんとなく納得だなぁ。青春の汗とか似合いそう。

「いや、今回は運も大きかったから」
「ははは、謙遜すんなって。まぁ、きみに勝つより前に垣代やこいつにも負けてるんだから、どうしようもないけどな」

こいつ、と言われて初めて、一之瀬の後ろに誰かいることに気付いた。覗き込むとおずおず顔を見せる。厚い眼鏡をかけた青年が見えた。ひっつめた髪。猫背。


『ボサボサの髪を後ろで縛ってて、今時牛乳瓶の底みたいなメガネかけてる見るからにオタクっぽい地味な奴。』


「…武田、龍一くん?」



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