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白虹学園
“全員”




「長雨!おいこら!」

佐助に後ろから怒鳴られて振り返る。あら、かわいい。

「真っ赤よ佐助さん」

指摘すると尚更赤くなった。握りっ放しだった手を、ばっと振り払われる。

「っ……ちょっとこっち来いよ」

早足で、佐助は廊下を進み始めた。横に並ぼうとすると歩調が速まって追いつけない。

「おい、佐助?」

様子がおかしい。腕を掴もうとしたところで、佐助が廊下の角を曲がった。

廊下の影、こんなところに?ていうような場所にトイレがあった。誰もいないし、公共のトイレ特有の嫌な臭気も無い。あんまり使われてないみたいだ。広すぎる施設ってこういう場所があったりするものだ。本当にこいつは色々知ってるなぁ、と感心していたら、佐助が振り返った。眉を寄せて、怒ったような顔をしてた。

「いいか、よく聞け」
「え?」
「俺が今から言う事、よく聞けよ」

真剣な様子に頷くしかなかった。どうしたんだろう。

「武田龍一は、」

賭けの事か相談をしてくるのかと思ったのに、佐助は思っていた事と全然違う名前を出した。

「武田…って、俺と同着だった?」
「そうだ。窓際から二列目、前から三番目の席の奴だ。ボサボサの髪を後ろで縛ってて、今時牛乳瓶の底みたいなメガネかけてる見るからにオタクっぽい地味な奴。威勢がいいのは名前だけで本人に害は無いはずだけど、一応気をつけろ。今回最高点を取ったってことは、お前の事を意識はしてる。勉強しか取り柄が無いから多分今必死だろ」

そこまで一気に言って、佐助はすうっと息を吸った。続ける。

「垣代早瀬は知ってるよな?あいつは見ての通り機械みたいな奴だから、闘争心とか自己顕示欲からは無縁だと思う。だけどあくまで生徒会役員だし、無闇に関わるな」
「ちょ、待てよ佐助。いきなりどうし」
「いいから聞けよ!」

怒鳴り声がトイレに響いた。佐助が忌々しそうな顔をして俺から目を逸らす。

「………一之瀬六。窓際の一番後ろの席。サッカー部の期待の星。今時っぽい茶髪の奴。一見優しげだけど、成績上位者の中ではこいつが一番『うちの店』の『常連』だ。いつもスレスレで三位に入るような奴だから、一番注意するとしたらこいつだな」


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