白虹学園
3
「……佐助?どうした?」
「あ、いや…」
俺を振り返った佐助の表情が一瞬曇っていたみたいに見えたけど、すぐに笑った。気のせいかな。
「何でもない」
その道を先に進んでいって、佐助は掲示板を見上げた。
うお、なんかちょっと緊張するぞ。
「佐助、どうだっ…」
た?と訊くより前に、自分の名前が目に入ってきた。
掲示板の、二番目に。
うわー!
一瞬、マンガみたいに『ガーン』となった。あれ、俺退学ですか?
あんまり無いこの学園での思い出か頭を巡る。
編入初日に唇を奪われ(しかも男に)、
迷子になり、
ご飯を恵んでもらい、
殴られ、
怒られ、
押し倒され(しかも男に)。
嫌だそんな青春!
弟泣かせてまで編入したのに情けなすぎる。カムバック学生生活!
「…とんでもない事になったな」
耳に入ってきたのは、佐助の案外冷静な声だった。横を見ると、佐助は気難しそうな顔で掲示板を見てた。ああ、賭け負けちゃったんだもんなぁ。悪いことしたな。でも俺の短い学生生活、素敵な思い出はほとんどキミとともにありました。ありがとう佐助。お世話になりました。借金は何としても返すから安心してくれ。
「…長雨?お前何泣きそうなツラしてんの?」
俺の視線に気付いた佐助が不思議そうに眉を寄せて訊いてくる。何でと言われましても。
「感動?ほんとバケモノな、お前」
にやり、と悪い笑顔で告げられた言葉の意味が分からなかった。ぽんぽんっ、と頭をたたかれる。
「とりあえずおつかれ」
へ?
悪い顔が一転優しくなったから、俺は目を瞬かせた。掲示板をもう一度良く見る。そこにはやっぱり俺の名前が二番目に載っていた。
『1位 武田龍一 498点
1位 水上長雨 498点』
「………あれ?」
「まさかバケモノが二人いるとはな。何だよ498点って?」
え、うそ、まさか、
「同着一位ってやつすか?」
佐助が何を今更、とばかりに肩を竦めた。
「見りゃ分かるだろ」
よ……………よかったー!
ほーっ、と体から力が抜けた。
そうか、同着か。てことは一応首席。本当によかった。なんとか特待死守できた。雷、お兄ちゃんはやったぞ。
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