白虹学園
掲示板前にて
「まぁぶっちゃけ、そこまで警戒しなくてももう平気かもしんないけどな」
佐助が眠そうにあくびをして歩きながら言った。
「え、さっきの話?」
寮の出口に歩んでいく。受付のところにホテルマンよろしく、明石さんが立っていた。
「おはようございます、浅野様、水上様」
「おはようございまーす」
「おはようございます、明石さん」
この人も笑顔が魅力的な一人だな。プロの笑顔だもんなー。自動ドアが静かに音を立てて開く。完璧な角度で明石さんは頭を下げた。
「いってらっしゃいませ」
家族じゃない人に『いってらっしゃい』を言われるのってなんか照れるよな。
軽く会釈で返すと、頭を上げた明石さんはさっきより優しい顔で笑ってくれた。
「そ、さっきの話」
佐助が改めて話し出す。空中に伸びる寮と校舎を繋いだ渡り廊下は結構な長さがある。両側の壁はガラス張り。見えるのは山ばっかりでアンバランスだ。
「何で?」
「♪きょーうは何の日?」
「♪ふっふーん」
「レスポンスありがとう」
佐助ウキウキウォッチング派じゃないのな。
今日…誰かの誕生日でしたっけ?あれ、俺そういえば佐助の誕生日知らないな。
「佐助誕生日いつ?」
思ったままを訊いてみると、佐助は目を丸くした後にバシッと俺の頭を殴った。
「いでっ、なんすか」
結構マジで痛かった。顔を上げると、佐助は何でか少し赤くなっていた。
「バカ、この歳になって誕生祝いの催促なんて誰がするかっつうの。大体どう考えても関係ねぇだろそんなの」
「うん、いやそうなんだけど、それとは別にさ。誕生日いつ?」
ありゃ、佐助ますます赤くなった。
「…………9月15日だけど」
なんかかわいいなー。
「へぇ、秋生まれか。いい感じに夏休み明けだな」
これはお祝い決定ですな。秋かー。栗、ぶどう、焼芋…食材に事欠かない季節だよなぁ。
「っ…………じゃなくて、今日は実力テストの成績発表だろーが!」
あ、と、思わず声が出る。すっかり忘れてた。
「分かってんだろうな。一位じゃなかったらお前借金地獄だからな」
にやり、と、悪い顔で笑われてたじろぐ。一週間前の実力テスト、今日が成績発表でした。緒事情で、佐助は俺が1位になるのに計10万賭けてたりする。賭けに勝たないと、俺には15万の借金返済が待ってる。
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