[携帯モード] [URL送信]

白虹学園
2






朝食を食べ終わって、昨日の夕食の分と合わせて食器を洗って、制服に着替えてしばらくニュースを見ていると、チャイムが鳴った。

テレビを消してカバンを持って、玄関に向かう。靴を履きながら扉を開けると、そこに佐助が立っていた。

「おす」
「おはよう、佐助」
「行けるか?」
「おうよ」

佐助は部屋の中をちらちら気にしてる。その意図を察して、少し笑った。

「綾先輩なら今日は来てねぇよ?」

佐助が一瞬目を丸くしてから、ほっとしたような、残念がっているような不思議な顔で笑った。

時々、直接か電話かで、綾先輩は「明日一緒に朝ご飯食べない?」と誘ってくれる。編入二日目にルームサービスを奢ってもらってしまったので、誘われた時には大抵俺が朝飯を振る舞った。と言っても、さすがに朝、イチから作るのは大変なので、大抵前日大目に作った夕飯を温めて出すんですけどね。

庶民のご飯に縁が無いだろう綾先輩は最初少し戸惑ったみたいだったけど、俺の卵焼きと味噌汁をとても気に入ってくれたみたいだった。
なんだか最近卵焼きの評判良いなぁ。ちょっと極めてみようかしら。

「まったく、藤堂先輩も危機感無いっつーか…お前も俺の忠告全然聞いてねぇしな…」

そういえば佐助に「生徒会役員にはあまり近付くな」って言われたねぇ。

「ごめん…分かってるんだけどさ、あのキレーな顔とキレーな声で『だめ?』とか言われるともう頭の中キャー!となっちまいまして…」
「…まぁ俺も断れねぇけどなーもしあの人にお願いされたら」

ふぅ、と佐助が溜め息をついて俺を目線だけで見る。

「くれぐれも見つかるなよ」
「はーい、ありがとう」

佐助がにっと笑った。綾先輩のお願いにも弱いけど、佐助のこの笑顔にも俺は弱い。思わずふにゃっと笑ってしまった。

振り返る。部屋の中を見て、

「いってきます」

言って部屋を出た。



今日も一日が始まる。





[前へ][次へ]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!