白虹学園
いつもの朝
目を開ける。
やっと見慣れ始めた天井があった。
「ん…」
ベッドから起き上がって、ぐーっと伸びる。振り返ってサイドテーブルに置いた目覚まし時計を見たら、セットした時間より10分早かった。おお、よしよし。アラームを切ってカーテンを開けた。今日もよく晴れてる。
ベッドから出てダイニングテーブルの上を見ると、ラップをかけた皿と裏返したお茶碗が昨日のままで並んでいた。
カーテンで閉じられたルームメイトの高見沢のベッドを覗く。ガランとして、ベッドはきれいなままだ。
昨日も帰ってないのか。それとも帰ってきたけどすぐまたどこかに行ったのかな。
まぁどっちにしろまた夕飯は食べてもらえなかったらしい。ここに来て二週間経つけど、口がつけられたことは一度も無かった。そんな訳で高見沢の夕飯は、毎日俺の朝飯と化すのです。余計なお世話と思われてるのかもしれないけど、無駄は無いからまぁいいじゃないか。
キッチンに入って味噌汁の鍋に火をつけた。その間に洗面所に入ってザブザブ顔を洗ってタオルで拭いた。目の前の鏡に顔が映る。わー髪の毛ぐしゃぐしゃだ。手ぐしでカバー、と思ったけど直らない。ズボラはだめですね。クシを手に取った。
なんか今日は懐かしい夢見たなぁ。
『1たす1は?』
「2…だよなぁ」
夢で俺は答えに迷ってた。
そういえば幼稚園までは1+1もできないくらいのおバカさんだったけれども。
訊いてきたやつの顔にはモヤみたいなものがかかってたな。誰だったっけ、あの声。
クシを置いて、タオルを洗濯カゴに入れて、洗面所を出た。うんうん考えながらキッチンで自分の茶碗にご飯を盛る。あ、味噌汁温まったかな。火を止めて、お玉でお椀によそった。味噌の良いにおい。朝って感じだなぁ。
箸も一緒にテーブルに持っていって、イスに座る。
今日の朝ごはんは肉じゃが、鮭の切り身、ホウレン草のごま和え、豆腐とワカメの味噌汁、それから白米様。
友人の黒岩大牙の癖に倣って、箸を親指の付け根に挟んで両手を合わせた。
「いただきます」
スズメの声が聞こえる。
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