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白虹学園
5

俯いて震える佐助は、力いっぱい殴られるのに耐える子供だった。誰が殴るんだ。こんなに良い子なのに。

「佐助は、俺が自分のせいで傷つくのが嫌だったのか?」
「違う」

佐助は顔を上げない。震えて、震えて、それでもはっきりと否定した。

「俺はお前が傷つくのが怖かったんじゃない。傷ついたお前に」

ぽたり、佐助の顔の位置からしずくが落ちた。











「お前に『お前のせいだ』って責められるのが怖かった」












ああ、もう、




しゃがみ込んで、下から佐助の顔を見上げた。ウサギみたいに目を真っ赤にした佐助が、俺を見つけてものすごくびっくりしたらしくて、さっと目を腕で隠した。

「見るなバカ!」
「いやだ」

何とか覗き込もうとする。

「アホか!何やってんだお前は!人が真面目に話してんのに!」

佐助はそれを避けまくって、最終的に「だーもー」と叫んでしゃがみ込んでしまった。膝の上で腕を組んで、そこに顔をうずめるから、もうどんな角度からも顔は見えない。それなら、

「佐助」
「………何だよ」
「抱きしめていいか?」

返事を聞く前に、膝立ちで佐助の背中に腕を回した。ぽふんと覆い被さるように抱きしめる。

「佐助」
「………何だよバカ」

腕の中で佐助の体が震えてる。腕に力を込めた。

「佐助」
「………だから、何だよバカ」






誰が知るより、ずっと弱くて優しい、俺の友人。








「佐助」








抱きしめたまま何度も何度も名前を呼んだら、とうとう佐助は黙ってしまった。その体が大きく震えた、と思ったら、俺の背中に腕が回った。ぎゅう、シャツを掴まれる。






「長雨」


「うん」


「ながめ」


「うん」


「一緒に、いてくれ」


「うん」


「一緒にいてくれ」


「うん、一緒にいるよ」






愛しいくらい泣き出してしまった佐助の体を出来るだけめいっぱい包み込んだ。









「一緒にいよう、佐助」









俺も声が震えてしまった。

誰かと、俺はずっと昔同じ約束をした。







今度はちゃんと守れるかな。










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あきゅろす。
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