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白虹学園
3

「だから何もないって。メシ食いに来た」
「じゃあなんでメシ食いにきたんだよ」

心配や疑念を通り越して、佐助のその問いかけが何か深い不安を持ってるみたいに見えてしまった。うーん、どう言ったら分かってもらえるかな。

「昨日あの後ですね」
「はい」
「高見沢に説教くらいまして」
「は!?高見沢に!?」

佐助は本当にびっくりしたらしくて、らしくない大声を上げた。思わずちょっと笑ってしまった。

「そう。もっと大事なもの大事にしろよって」
「はぁあ…!?信じらんねぇ…」
「いや、かなり要約すると、だけどな」

本当はもっとずっとぶっきらぼうな言い方だったけど。

「一晩考えた。結構すぐ分かった。俺には今すごく大切な人たちがいる。その人たちと繋がっていることが大事だと思った」
「………お前らしいよ」

佐助は悲しそうな顔で笑う。俺は言った。













「だからそれを大事にしに来たんだ」














佐助は目を見開いた。
それから堪えられないみたいに俺から目を逸らした。

「………バカ、サラダ食うのに箸いるじゃねぇか。持ってくる」

佐助は席を立って俺に背中を向けた。キッチンの向こうに入っていった佐助は、シンクの前で立ち止まった。

「…………長雨、俺、お前に言おうと思ってた事がある」

佐助の声はしっかりしていたけど、彼は振り返らなかった。

「何?」

少しだけ沈黙が落ちた。長いような短いような不思議な時間だった。





「この事件が解決したら俺たち、ツルむのやめよう」





一瞬、不覚にもどきりとした。

佐助は振り向いた。冷たい目だった。歪むように笑う。

「昨日演技でお前が言った事さ、マジなんだわ。もう俺お前に巻き込まれたくねぇんだよ」

これは演技だ。きっと。

「嘘だろ、佐助」
「嘘じゃねぇよ」
「嘘だ」
「嘘じゃねぇ!」

叩きつけられるように叫ばれる。

「もう疲れた。お前のせいで高見沢みたいなネタの源泉もなくなったし、俺までリンチされたらたまらない」

ああ、くそ。

俺も席を立った。佐助の目の前まで歩んだ。佐助は本当に演技がうまい。こんなに近くに来ても冷たい瞳は揺るがない。だけど。


ぺちん、と佐助の両頬を掴んだ。




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あきゅろす。
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