白虹学園 2 「情報屋って大変だな」 俺も書類を拾い上げる。あれ?砂川按司の生い立ちがびっしり。へぇ、南の出身なのか。どうりで目鼻立ちはっきりしてると思った。他の書類は… 「勝手に見るな。お前は余計な事知らなくていい」 ひょいっと書類を取り上げられた。ついでに弁当箱もさらわれる。テーブルに出来たかすかなスペースに佐助はそれを置いた。 「座れよ」 「ありがとう」 お言葉に甘えて、椅子に腰掛けた。佐助が書類を蹴り分けてキッチンまで行って、コーヒーを淹れてきてくれた。佐助が向かいに座る。こんな手間かけさせるなら、もっと凝ったもの作ればよかったかな。 弁当箱を開ける。塩むすびと卵焼き(今日は甘いやつにした)、ウインナー、サラダ。超簡単朝メシ。 「で?」 佐助がコーヒーをすすりながら俺を見る。 「ん?」 「ん?じゃねぇ。何か用があって来たんだろ」 「?いや、ないよ」 「は?」 はい、と、ラップのまま塩むすびを渡す。佐助がきょとんとした顔でそれを受け取った。 「いただきます」 「………いただきます」 佐助は何か言いたそうにしながらも挨拶をして、塩むすびを口に運んだ。 「む」 お米を口に含んで、佐助が呻いた。ニヤリ。 「うまいだろ?」 「………うまい」 疲れた時の塩むすびは最強なんですよね。握り立てだからほくほくだし。塩も少し多めにしておいたから。さあ、俺も卵焼きを… 「あ、しまった箸忘れた」 「割り箸いるか?」 「平気。行儀悪いけど見逃してな」 卵焼きを指でつまんで食った。佐助もしばらく迷った感じだったけど、結局俺と同じように指で卵焼きをつまんで口に運ぶ。 「甘い」 「佐助んちはしょっぱい卵?」 「いや、うちは卵焼き自体作らない。うまいな」 本当に感心したみたいに言われるから照れる。 「さんきゅ」 しばらく沈黙が落ちて、黙々とメシを食った。 「で?」 「え?」 「何もないわけないだろ。何しに来たんだよ」 浅野くんなかなか疑い深いですな。 [前へ][次へ] [戻る] |