白虹学園
約束
浅野佐助は、目を丸くしたまま扉を開けた。
「長雨…お前、どうしたんだ」
何かあったのかと心配げな表情をする佐助に笑う。そういえば佐助の部屋に来た事ってあんまりなかったな。
「朝メシ。一緒に食わないか」
弁当箱を差し出すと、佐助はくるんと丸い目に戻った。まだ7時だっていうのに、佐助は制服姿だった。ブレザーは着てなくて、シャツは着崩されていた。
「もしかして寝てない?」
「いや、寝たよ」
「何時間?」
「5分」
「………それは寝てないっていうんだよ、佐助くん」
入っていいかと聞くと、佐助は気まずそうな顔をした。
「あー…」
「まずい?あ、そうか。ルームメイトに悪いか」
「いや、ルームメイトはいないけど」
「え?」
でも佐助は一人部屋じゃないし…
佐助は困ったように頭を掻いた。
「あー…のさ、今、すげぇ」
「すげぇ?」
「…………汚いんだよ」
へ?
佐助は本当に気まずそうだった。
「全然いいよそんなの」
「いや、多分お前の想像を絶すると思う」
「じゃ、他の場所行く?」
佐助の性格からして、他の場所で俺と二人にはならないと思った。
「…………入れよ」
大正解。
「どうもどうも。お邪魔しまーす」
玄関を上がると、なんだかもうすでにすごいことになってた。紙。ていうか書類。書類の山・山・山。床が見えないくらいの書類が散らばってる。
「おおお」
「ああもう、だから言っただろうが、汚いって!」
某金田一先生みたいに頭をバリバリ掻きながら、佐助はダイニングテーブルに乗ったパソコンの周りの書類をバサバサまとめていく。カップラーメンや冷凍食品の容器もいくつか。片付けている佐助の耳が赤い。かわいい。
「いや、だからそこまでじゃないって。俺の前の学校の先生はもっとひどかったけど」
佐助はむっとして振り返る。
「…お前はいつもきれいにしてるだろ」
「え、そうかな」
「だから見られたくなかった」
結構そういうの気にするよなー佐助は。
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