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白虹学園
行ってきます





ベッドに潜ったらすぐに朝が来てしまった。




「むぅ」

天井を見上げたまま唸る。

この数時間、考えていた。
高見沢の言葉。何が自分にとって大切か。





よし。





のそのそ起き出して、顔を洗って着替えた。キッチンに立つ。
ご飯は昨日炊いておいた。塩むすびを手早く作って、卵焼きとウインナーを焼いた。簡単なサラダも作って、弁当箱に詰める。一人分残して、ラップをしてダイニングテーブルに置いた。書き置きを残そうかな、と思っていたら、シャッ、とカーテンの開く音がした。

「………………」

高見沢が超絶睡眠不足な顔で俺を睨む。まだ7時前だ。2時間も寝てない。

「おはよう。ごめんな、起こしたか?」
「………………」

やっぱり低血圧丸出しのツラで、高見沢は洗面所へ消えていく。途中、キッチンのゴミ箱に何かを入れた。

なんとなくそのゴミ箱を覗く。なんだろ。薄い銀色の…あれ、これは…カードキー?

「おい、高見沢」

思わず拾い上げて、バスルームに入ったら、高見沢は上半身裸で振り返った。わあ。

「んだよ」
「あ、いや、メシ作ったから食ってな。簡単で悪いけど」

思わずカラダに見とれたとは言えない。筋肉のつき方が自分がなりたい姿そのものだった。腹筋割れてるけど細いし、腕も場所によって全然太さが違う。胸には勲章みたいな傷跡がたくさんついている。

「………お前は?」
「佐助の所に行ってくる。話があるから。そのまま学校行くと思う」
「……………」

高見沢は「ふーん」とも言わなかった。洗面所でじゃぶじゃぶ顔を洗う。顔を上げる。犬みたいにぷるぷる顔を振るんじゃないかと思ったけど、さすがにそれはなかった。普通にタオルで拭いてる。

「あ、高見沢、これ、ゴミ箱に入ってたぞ」
「あ?」

カードキーを見せる。高見沢はそれを受け取らなかった。ちらりと見てふいと目を逸らしてしまう。

「いらねぇ」
「いらねぇって…せっかく、」
「予備の方だ。本物を見つけたら処分しろと愁に言われてた」

会長に。

「いや…それにしたってお前、ちゃんとハサミで切ったりしなきゃだめだろ。また悪用されたらどうするんだ」
「……………」

高見沢はきょとんとした顔で俺を見た。知らないのかよ。ゴミ箱から直接焼却炉にいくわけじゃないんだぞ。

「まぁいいか。それじゃ俺が処分しとくから。あ、食べ終わったらお皿冷やしといてな」

高見沢のカードキーを自分のポケットにつっこんだ。弁当箱と鞄を手にして、部屋から出て行く。

「行ってきます」
「……………」

沈黙に見送られて一歩足を踏み出す。





あっ、







「高見沢ー」

「あ?」

「『皿冷やす』っていうのは『冷蔵庫に入れる』んじゃなくて『水につける』って意味だからな」

「…………おう」



おにぎりを頬張りながら、高見沢は一瞬の間の後で頷いた。






言っといてよかった。







「行ってきます」

「…………おう」




あら、

言ってみてよかった。








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