白虹学園
2
「会長は素晴らしい人よ。一年間、傍で彼の仕事を見ていたけれど、何事もそつがないの。文武両道で人望もある。優しくて、美しくて、頼りになる方だわ」
「そうですか…」
やっぱり俺の思い過ごしだろうか。
「ただ、」
綾先輩が続けたから、思わずパッと彼を見る。少し戸惑うような表情のままで、先輩は言った。
「それだけ、なの」
「え?」
それだけ、?
「そう、なんていったらいいのかしら…例えば、長雨ちゃん。佐助ちゃんの好きなところを言ってみて」
と、唐突だな。
「ええと…佐助はすごくがんばり屋で、照れ屋で…普通より色んな事を一生懸命考えてると思います。ちょっと悪い奴だけど信じられないくらい良い奴で、心配性で、そのくせ自分も結構むちゃくちゃで、死ぬほど頭が良いです。それから…」
「ふふっ」
綾先輩が噴き出すみたいに笑った。うあ、恥ずかしい。
「な、なんですか」
「ううん。ごめんなさい。佐助ちゃんが羨ましくなっちゃった」
とか言いながら、綾先輩は嬉しそうだ。
この人の好きなところも列挙してみようか。100は軽いですよ。
「私ね、好きな人の好きなところを挙げる時って、そんな風に『心配性』とか『結構むちゃくちゃ』とか、短所にもなりえる部分が挙がってくるものだと思うの」
ああ、なるほど。
綾先輩が言わんとしている事が分かったような気がした。
[前へ][次へ]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!