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白虹学園
2

「ま、部屋に放り投げてきてやったから大丈夫だろ。一之瀬が個室でよかった」
「そういう問題か…」
「俺はむしろ一発で我慢した高見沢を誉めてやりたい。あいつがやらなきゃ俺がやってた」

思い出したのか、佐助の眉間に皺が寄る。佐助が本気で腹を立ててる。珍しいな。

「ごめん。本来俺が聞くべきだったのに」
「いいよ。俺が言い出したんだから」
「佐助ちゃん、座って」

綾先輩に促されて、佐助が会釈する。

「すいません、夜分に」
「いいの。待ってたわ。無事でよかった」

綾先輩がふわっと微笑んだので、佐助が少し赤くなる。わかります。この人の笑顔は本当に恐ろしい威力を持っている。

佐助が一人掛けのソファに座って、綾先輩はもう一度俺の隣に座った。

「それで…一之瀬は何か喋った?」
「ああ、いくつか。信憑性はわかんねぇけど」

佐助はポケットから小さな機械を取り出した。

「何?」
「テープレコーダー」
「え、いつの間に」
「最初から。写真と音声は決定的証拠の基本だからな」

慣れた仕草で、佐助はテープを巻き戻して再生した。



『…った、分かったよ。話すって。濡れ衣着せられたんじゃワリに合わない』



一之瀬の声がレコーダーから溢れた。

『だからマジで俺はやってないって。高見沢に恨み持ってるって奴らのウワサ聞いてたから、そいつらに頼んだんだよ』
『誰だ』

佐助の問い掛けに、一之瀬は含むような笑い方をした。

『F組の砂川。高見沢くん、あんたその様子じゃ心当たりあるんだろ?』

高見沢は話しかけられても何も言わなかった。

『そいつらに依頼して、一晩経ったら水上が学校来てなかったからさ、笑ったわ。高い金払った甲斐があったよ』
『………仲間は?』
『三人。砂川と島と村澤』
『三人、か』
『ああ。まぁそれくらいいなきゃできないだろ、リンチなんて』
『………それにしても、ナイフなんて使わなくたっていいだろ。やりすぎなんじゃないのか』

ん?ナイフ?ナイフなんて…誰も持ってなかったよな。

「引っ掛けだ」

佐助がレコーダーを見下ろしながら呟いた。ああ、なるほど。一之瀬がその場にいたかどうか確かめるためか。もし一之瀬が『ナイフなんか使ってない』と言ったら、現場にいた可能性が高くなる。


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