白虹学園
4人目は誰か
先輩は俺を自分の部屋に連れてきてくれた。
「それじゃあ…その、イチノセくん?が犯人だったの?」
「みたいです」
「そう…意外ね」
先輩の個室は信じられないくらい広くて豪奢だった。玄関を上がるとひろーいリビングとダイニングが広がっていて、ベッドルームに行くのに室内なのに階段がある。ベッドは天蓋つきでお姫様ベッドみたいだ。照明はシャンデリアだし、二人部屋と比べると天井も高い。一人でこんな部屋使うのは寂しくないかなぁ。
薄型なのに、多分一人じゃ持てないくらいバカでかいテレビの前の黒い革のソファで向かい合って、綾先輩は俺の傷に冷たいタオルを当ててくれた。
「ありがとうございます」
「ねぇ、長雨ちゃん。気にする事ないわよ」
綾先輩は切なげな表情で俺を覗き込んだ。う、なんだかくらくらする。この部屋は綾先輩の甘くて優しいにおいに満ちている。
「彼に何を言われたとしても、それは全部彼の逆恨みだし、佐助ちゃんが言ったみたいにあなたに非はないわ」
「………でも、一之瀬が本当に犯人なのか疑問で…」
綾先輩は少し目を丸くした。
「どうして?部屋に入ってきたんだから、彼が犯人である事は間違いないでしょう」
「前の複数犯とは、あまりにも違いすぎるんです。前の奴らは目出し帽みたいなものを被って変声器を使っていたけど、一之瀬はフードを被って布で口を隠しただけだった。変声器もありませんでした」
「慌てて準備し忘れたのかも」
「それに…」
首に手を当てる。熱を持った圧迫のしるし。あの時、一之瀬の指は何かに怯えるみたいだった。
「一之瀬は…震えてました。複数犯の方は、ためらいなんて少しも無かった」
ピンポーン、と音がした。
「ちょっと待って」
綾先輩が席を立つ。玄関の方に向かって客を迎え入れた。
「佐助」
入ってきたのは佐助だった。ちょっと疲れたみたいな笑顔を浮かべる。
「無事か」
「俺は平気。佐助は?高見沢は?」
「俺も大丈夫。高見沢はもう寝るってさ」
「あいつも大丈夫?」
佐助は一瞬黙ったけど、すぐに頷いた。
「まぁ、無傷だよ。あいつはな」
「まさか…」
「一之瀬は見事なボディブロー食らって気絶したけどな」
佐助くんはケロッと言った。
やっちゃったのか高見沢!
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