白虹学園
クラスメイトの忠告
授業は何事もなく過ぎ、昼休みになった。席を立とうとしたら、机にとん、と手がつかれた。
顔を上げる。俺を見下ろすのは一之瀬。後ろには武田もいる。
「水上」
一之瀬が笑顔を浮かべて話しかけてきた。
「一緒にメシ食わないか?」
その笑顔が少し怖い。俺もなんとか笑ってみる。
「いや、悪いけど先約がいるんだ」
「………誰だよ?」
すぅっとその顔つきが沈む。俺も一之瀬と話したい気持ちはある。訊きたい事もある。でも今はだめだ。
「ろ、六くん、仕方ないよ…」
「うるさい」
止めようとした武田を一之瀬が突き飛ばす。よろけた武田を慌てて支えた。あっぶねぇ。武田は背が高いから、俺もうまく支え切れずに少しよろけた。
教室がしんとなった。佐助もこっちを見てる。
「水上、忘れるなよ」
どきり、と心臓が鳴った。一之瀬がすごい目で俺を睨んでくる。
「忘れるな。全部お前のせいだ」
ああ、
分かってる。
踵を返して、一之瀬は教室を出ていってしまった。さわさわとした空気と武田が残される。武田は金縛りが解けたみたいに俺から離れた。
「ご、ごめん水上くん…」
「俺は平気。武田こそ大丈夫だったか?」
「うん、君が支えてくれたから…」
しゅん、と、武田が俯く。
「どうしたんだろう、六くん…」
泣いてしまいそうな震える声に、なんだか申し訳なくなる。近付くと、武田ははっとしたように俺から離れた。
「ご、ごめん!」
かぁっと武田の顔が赤くなる。あれ?何だこのリアクション。
「あの、六くんの言ったこと、えっと、気に、しないでね。ごめん、なさい、ごめん」
たくさん頭を下げて、武田は一之瀬の後を追っていった。
こっちを見ている佐助に、こっそり笑いかける。佐助は一瞬目を見開いてから、ふいっと目を逸らした。
一之瀬の声が耳に響いてる。
やっぱり、忘れちゃいけなかった。
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