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白虹学園
情報屋と転入生の仲間割れ





朝会が終わるなり俺を誰もいないトイレ(でも誰も来ない訳じゃない)まで引きずるように連れてきたのは、一之瀬六…ではなく、浅野佐助だった。壁に体を叩き付けられる。

「いて」
「悪い」

佐助が思わずといったように謝ってきた。俺は佐助を見て笑って頷く。佐助も頷いて、俺の胸倉を掴んだ。すぅ、と彼が息を吸った。

「何てことしてくれんだよてめぇは!」

びくっ、とした。眉間に皺を寄せて怒鳴りつける佐助の顔に肌が粟立つ。なんとかその目を見つめ続けた。

「………何の話だ?」
「あれは俺らの情報だろうが!よりによって生徒会にバラす馬鹿がいるか!」

俺は薄く笑ってみせた。

「俺らの、じゃなくて俺の情報だろ?」
「っのヤロォ…誰も買わねぇんだよそんな危ねぇネタ…!」

怒鳴り声につられるように人が集まってきた。それを分かっていて続ける。

「売れなくなるの知ってて先輩に暴露しやがったな」
「…佐助、俺がマジでやられたのは知ってるだろ」

佐助がぐっと詰まった。

「お前がこれっきり俺と手を切ろうとしてるのは知ってる。それはいいよ。でも俺だって自分が大事だ。分かるだろ。お前がいなくなれば俺を守るものはなくなる」
「だからって…」
「契約切れだ。佐助、いいじゃないか。もう十分儲けたんだろ?」

遠巻きに俺達を見る奴らを見やって、佐助は舌打ちをした。

「ああ…分かったよ。お前とはこれっきりだ。殺されても知らねぇからな」

俺を突き放して、佐助は出ていく。

「どけよ」

随分人だかりができていた。佐助はそれを押し退けていった。全員が好奇の視線を向けてくる。俺も乱れた服を直して、何事もなかったかのようにトイレから出ていった。





ふう。
佐助ったら名演技。





少し間を空けて教室に戻る。佐助の考えたこの作戦を成功させるには、なるべく早く噂を広める事が重要だった。犯人に、今なら俺が一人だと、今叩かないと危ないと思わせないといけない。
もう同じクラスには広まったみたいだ。クラスメイトは俺や佐助を見て、サワサワと噂話をしている。
この事件が起きて良かったな、と思う事がいくつかある。一つは、高見沢の本心を見れたこと。もう一つは、佐助の気持ちが分かったこと。



ずっと、こんなひとりぼっちの中で耐えてきたのか。



窓際の友人は、数日前みたいに俺を見ない。だけど、あの日みたいに物悲しい気持ちにはならなかった。









今すぐあいつに飛びついて、
力一杯抱き締めて、
ありがとうを言えないことが、すごく悔しかった。







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あきゅろす。
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