白虹学園
4
佐助が少し顔をしかめた気がした。彼なら高見沢の嘘には気付いたかもしれない。綾先輩の表情は変わらなかった。
「…なら仕方ないな。思い出したら教えてくれ。大事な事だ」
だけど佐助は追及をしなかった。息を短く吸って、すぐに吐く。
「ここでみんなに訊きたい」
佐助は高見沢を始め、俺達全員を見回した。
「俺は砂川達を問い詰めるべきだと思う。長雨、お前は?」
少し、考えた。
「………二度と起きてほしくないとは思う。問い詰めれば止まるなら、そのほうがいい」
佐助が頷いた。
「藤堂先輩は?」
「私もそう思います。罰せられるかどうかは別にしても、このままにしておく訳にはいきません」
「その為に高見沢と協力してもらう事になってもですか?」
「そんな事」
綾先輩は初めて高見沢を見て、優雅に、だけど不敵に笑った。
「私も佐助くんと同じ気持ちですから。高見沢くんさえ良ければもちろん協力しますよ」
高見沢がまた舌打ちをするのが聞こえた。仕方ない。この人に敵う男なんて多分いないぞ、高見沢。
佐助は頷いて、もう一度高見沢に目を戻した。軽く指を組んだ手をテーブルに乗せたまま、尋ねる。
「あんたは?自分のカードキーを取り戻したくないか?」
「………………」
高見沢は一瞬、少しだけ眉を寄せた。
「やれるもんならな」
「やれるはずだ。あんたの協力があればな」
「………言ってみろ」
佐助はまた頷いて、もう一度俺達を見回す。
ああ、かっこいい眼だな。本当にすごい奴だ。
佐助が情報屋で食っていけたのは彼の持っている情報だけのおかげじゃない。きっと一番の理由は彼自身の能力だ。
「全員に協力してほしい。今日中に奴らを捕まえて、同時にカードキーを取り戻す」
佐助の声に迷いは無かった。
「長雨」
その瞳が俺を見る。一度、何かに怯えるみたいに目を伏せて、もう一度俺を見た。
「信じてくれるか」
頷かない訳がなかった。
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