白虹学園
食卓での結託
我に返ったらきっと綾先輩以上に怒るんだろうと思ったのに、佐助は思ったよりずっと冷静に二人を宥めて、話を聞いてくれた。
「…つまり、お前は犯人を捕まえようとしてチェーンを開けて、そこにたまたま高見沢が帰ってきた、と」
綾先輩と高見沢はダイニングテーブルの対角に座って目を合わせようともしない。高見沢の隣は俺。綾先輩の隣は佐助。綾先輩は高見沢からぷいっと顔を逸らしたままだ。
「そう」
「馬鹿野郎」
「すいませんでした」
佐助は呆れた顔でため息をついた。
「でも、佐助くん。長雨くんはあなたにもすぐに電話したんですよ」
綾先輩がすかさず言ってくれる。佐助がちょっと困った顔をした。
「それは…俺も悪かったと思ってます」
「いや、仕方ないよ。夜中だったんだしな。でもどうかしたのか?」
「いや、単に寝てただけだ」
随分あっさり言うから、不安になる。綾先輩の言葉が蘇った。
『あの子、本当にすごく自然に嘘がつけるのね』
「それで、あんたが犯人じゃないっていう根拠は?」
佐助はすぐに話題を戻した。今度は俺じゃなく高見沢に聞いたみたいだ。高見沢に了承をとって話したんだけど、奴はちらりと佐助の方を見ただけで、無視をした。
「高見沢」
「いいよ、長雨。当然だ」
佐助は自分のカバンを引き寄せた。中から分厚いファイルを取り出す。昨日のやつだ。
慣れた仕草でページを捲る。分厚い紙の束をクリアファイルのポケットから引っ張り出して、高見沢に差し出した。
「これで全部だ」
高見沢はそれの中を見て、目を見開いて、顔をしかめた。やっぱり履歴書みたいなものが見えた。だけど砂川達のそれとは比べ物にならないくらい分厚い。多分佐助が持つ、高見沢の『情報』だ。
「今は手持ちが無いけど、あんたの情報で稼いだ金も明細つきであんたに返す。今後一切、俺はあんたの情報を扱わない。約束する」
「佐助…」
高見沢も、綾先輩も佐助を見つめていた。佐助は真剣だった。高見沢が初めて、佐助を見据えて言った。
「………信じると思うのか、情報屋」
「こればかりは信じてもらうしかない。俺は正直言ってあんたの事なんてどうでもいいけど、長雨が学校やめるのは嫌なんだ」
さ、すけ。
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