白虹学園
2
「っ…!」
高見沢を見て、綾先輩は震えるように息を吐く。
「ごめんなさい、長雨ちゃん」
?何で俺に謝…あ。
「せんぱ…!」
パシッ、と、何かを叩くような音がした。
高見沢は、自分に向かってきた綾先輩の拳を、無表情のまま手のひらで受け止めていた。
「同じ手二度も食う訳ねぇだろうが」
「殴らせなさい」
「は、ふざけんな」
「言ったはずです。次この子にこんな事をしたら許さないと」
「許さなきゃどうなる」
ぎりっ、と、高見沢の手に力が籠ったのが分かった。何この格闘マンガみたいな展開。
「っ」
拳を掴まれたままの綾先輩が顔をしかめる。
こ、れはまずい!
「あ、綾先輩!あの、落ち着いてください。俺大丈夫ですから」
慌てて間に入った。だけど二人は睨み合ったままだ。
「大丈夫です長雨くん。すぐ終わりますから」
敬語が怖いっす綾先輩!
「やってみろや」
「高見沢…!」
高見沢に懇願を込めて首を振る。高見沢は一瞬困った顔をしてから、舌打ちをして、綾先輩の手を突き放すように放した。この子良い子だ。気付いて綾先輩。
「廊下に出ます?」
綾先輩が男前に顎で外を示す。
「良い度胸だな。男女」
高見沢が再び額に青筋を浮かべつつ不気味に笑う。
「その男女にあっさり殴られたのはどなたでした?」
綾先輩もどこまでも優美に微笑んだ。
「減らず口叩いてねぇで掛かってこいや」
高見沢が挑発する。
なんでこんな仲悪いんですかこのふたり。
ピンポーン
間抜けなチャイムが再び響く。
ああ、なんという素敵なタイミング。
「ちょ、あの、そのまま待っててくださいね二人とも」
言い置いて急いで扉を開けると、思った通りブリーチした茶色の髪の友人がそこに立っていた。
「おう、なが………」
「佐助ー!助けてー!」
思わずしがみつく。佐助は目を丸くして俺を受け止めた。
「っ」
「?佐助?」
あれ?一瞬、佐助の顔が歪んだ気がしたような。でももう困ったような顔に戻っている。
「バカ、いきなり抱き付くな。一体どうし…」
友人は部屋の中を見て、
顎の外れそうな顔になった。
そりゃそうですよね。
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