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白虹学園
犬猿のふたり







高見沢はきれいに朝食をたいらげてくれた。

「うまかった?」

ともう一度聞いてみたら、むっとした顔をして、

「腹が減ってただけだ」

と返されたので、笑ってしまった。







ピンポーン






チャイムの音に、俺は片付け途中の食器から顔を上げる。茶をすすっていた高見沢も怪訝そうに扉を見た。

「あ、多分友達だと思う。知ってるよな?浅野佐助」
「………情報屋だろ」

あ、そうか…。高見沢にとっては敵、みたいなもんなんだよな。

「外で話してくる」
「入れろよ」
「え?でも」

高見沢はほとんど表情もなくもう一度言った。

「いいから入れろ」
「………うん」

だい、じょうぶ…なのか?

とにかく席を立って玄関まで行った。扉の鍵を掴んで、しばらく固まる。激しい修羅場の予感。

ええい、ままよ!

扉を開けた。

「おはよう!さす………け?」

だけど扉の向こうに立っていたのは、予想とは違うお姉さんのようなお兄さんだった。

「お早うございます、長雨くん」
「綾先輩」

綾先輩は俺の顔を見ると、ほっと息をついて微笑んだ。

「すみません、連絡もせずに。どうにも心配になってしまって」

心臓の辺りがほっこりあたたかくなる。それで朝早くから様子を見に来てくれたのか。

「ありがとうございま…」

す、まで言い切るより前に、綾先輩の目が見開かれた。かと思うと、ぐいっと腕を引かれて、俺はいいにおいに包まれる。なにこれ。

「そういう事ですか」

綾先輩の声はものすごく近くから聞こえて、それで気付いた。俺は今綾先輩に抱き締められているんだ。庇うみたいに。

「てめぇは…」

高見沢の声が後ろから聞こえる。

「どうしてあなたがここにいるんですか?高見沢くん」
「てめェの部屋にいちゃ悪ィか」
「ええ、悪いです。長雨くんに何をしたんです?」
「ちょ、あの、綾先輩」

誤解ですと言おうとしたところで、後ろから嘲るような笑いが聞こえた。

「首締めた」









こーの正直者ー!









綾先輩の体が離れて、泣きそうな目で覗き込まれた。首に細い指が当てられる。

「ひゃ」

くすぐったい。

「見せて」

囁かれて首を見られた。しまった。指の跡があったのかもしれない。その目が見開かれる。



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あきゅろす。
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