白虹学園
2
「この間のは塩焼き。今日のはゆずとしょうゆで照り焼き風だからな」
「…………」
「どっちの方が好き?」
「………こっち」
「ならよかった」
妙にほのぼのした空気が、なんだかおかしかった。そうか、食ってくれたのか。
「ケガ、痛くないか?」
「別に…慣れてる」
あぶなっかしいなぁ。
「高見沢は喧嘩が好きなのか」
俺には未知の世界だ。
「別に好きじゃねぇ」
「じゃ、何で砂川と喧嘩始めたんだ?」
「……………」
「あ、ごめん。単なる世間話だからな。話したくなければいいよ」
難しい。
詮索をしたい訳じゃないけど、高見沢の事をもっと知れたら嬉しいと思う。同じ意味かもしれないけど、気持ちとしては随分違う。
「……………あの野郎と俺がウマが合いそうに見えるかよ」
あれ、でも答えてくれるみたいだ。嬉しいな。
「いや、ウマが合うようには見えないけどさ。なんとなくそれだけじゃない気がして。きっかけみたいなものはあるんだろ?」
高見沢は食事を続けた。ありゃ、黙っちゃったかな、と思ったら。
「…………笑ったら、」
「え?」
ぽつり、と、高見沢が言う。
「笑ったら殺す」
子供みたいな事を真剣に言われた。
「了解」
高見沢は眉を寄せたまま続けた。
「入学してすぐ、あいつらが諏訪原を侮辱するのを聞いた」
「諏訪原って…学園長?」
高見沢が頷いた。
「それで?」
先を促したら、言い淀むようにまた目を逸らして、高見沢は言った。
「それだけだ」
「え」
「その場で全員ボコボコにしてやった」
「……………」
「噂が広まった」
「……………」
「で、恨まれた………………オイ、笑うなっつっただろ、殺すぞ」
「いや、だって、ごめん」
ものすごい目で睨まれる。違うんだ高見沢、これはおかしくて笑ってるんじゃなくて、嬉しくて笑ってるんだ。
「高見沢はお父さんが好きなんだなぁ」
高見沢は不愉快絶頂みたいな顔になる。
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