白虹学園
いつもと違う朝
目が覚めた瞬間、また夢を見ていたんだと気付いた。
天井が見える。白いもやも赤い火も見えない。
「………ろっくん」
そうだ。思い出してきた。多分幼稚園の頃だ。誰かのことを、多分すごく仲が良かった誰かのことをそう呼んでた。『ろっくん』。
「ろ、く」
本名は思い出せない。だけど、似た名前の人を一人だけ、俺は知ってる。
一之瀬、六。
そう、かぁ。
まだ頭には白いもやがかかっていて、相手の顔ははっきりしない。
だけど俺は彼と約束をした。それから多分、破った。
そう言えば武田が、昨日一之瀬の様子がおかしかったと言っていた。
今日は授業に出るかな。話す時間はあるだろうか。
起き上がる。目覚まし時計を見る。6時20分。おお、セットした時間より10分早いぞ。
目覚ましを止めて、ベッドから出た。体はまだ痛いけど気分は昨日よりずっといい。
忍び足で部屋から出て、高見沢の部屋の仕切りをちょこっとだけ開けて覗いた。
わー、いる。
毛布が人の形に膨らんでいて、枕にきらきら光る金色の頭が乗ってるのを見て、思わずガッツポーズ。ィエス!
実は帰ってきてくれた事自体は本当に数回だけあるんだけど、朝まで高見沢が部屋にいるのは初めてだ。
これは
なんとしても
朝メシを食ってもらわないとな!
キッチンにひたひた歩いていって、炊飯器がついてるのを確認した。よし。
すぐさま部屋に戻って速やかにジャージを脱いで急いで畳んでさっさと着替えて制服のシャツのままキッチンに戻る。
手を洗ってエプロンを装着した。昨日の夜といでタイマー予約しておいた炊飯器を見る。よしよし。あと10分で炊けるから、蒸らす間に作ってしまおう。
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