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短編・詩
白骸 What day is it today?
注意

これは白蘭プロフ公開が待ちきれないが故の
白 蘭 暫 定 バ ー ス デ ー
となっております

決して公式なバースデーではありませんので
苦手な方はご注意下さい








「ねーねー骸クン今日何の日か知ってる?」

白さと広さを併せ持つ部屋の中、数少ない家具の一つであるソファーに寝そべり、すぐ頭の上に腰掛けている人物に問いかけた。

つまらなそうに新聞をめくっていた手がぴたりと止まる。白を基調とし、部屋の主でさえ白いその部屋の中、骸と呼ばれたその人物だけが黒い。

「なんですかいきなり」

不機嫌そうに眉を潜め、白蘭の方をちらりと見やる。四六時中子供のように笑っているその顔はやはり笑顔で、溜め息を一つつくとテーブルの上に置かれているカレンダーに目をやった。
日付は3月14日。思い浮かぶのは一つしかない。

「ここは日本ではありませんし、第一僕はチョコなど貰っていません」

時間の無駄だとばかりに言い捨てると、再び新聞に視線を戻した。
ちらりと視界の隅に見えた白蘭の顔が傷ついているように見えたのは気のせいだろうか。

「えー酷いなぁせっかくプレゼント用意したのにー」

「いりませんよ。貴方からの贈り物などろくな物じゃないに決まっています」

新聞をテーブルに投げやると、それに当たったカレンダーが足下に転がった。

「酷いよー」

ぷくっと頬を膨らませた白蘭を見ると、面倒くさそう足を組み替えた。

「大体同性にプレゼントを貰って喜ぶ男がいますか」

「僕は嬉しいんだけどなぁ」

そう言った白蘭に違和感を感じる。今日の白蘭は何かが違うような気がしてならない。
それは腹心の部下である入江正一ですら見落としかねない程の僅かな違和感であったが、人心掌握術に長け、長い間軟禁されていた骸には手に取るように伝わった。
だからと言って無関心なねには変わりないのだが…。

「ねー他に思い付かない?」

「しつこいですね」

呆れ果て溜め息をつくと、自分を見つめてくる白蘭の視線から逃れようと足下に転がったカレンダーに手を伸ばす。軽くてシンプルなそれを拾い上げると、落ちた表示に捲れてしまったページを3月の欄に戻した。

ふと、今日の日付のスケジュール欄に文字を消したあとがある事に気付いた。光に当ててそれを読み取ると、始めに『僕』とありスペースを空けて『日』という字だけは読み取る事が出来た。

他の文字は潰れてしまって判別不可だが、空きスペースから推測するに2、3文字。
骸にはそれだけで充分過ぎる手掛かりだった。
今日の白蘭の不自然な態度と消された僕○○○日という予定。それらから導き出される答えはただ一つ。

「白蘭貴方…」

続けられるはずだった言葉は、白蘭の泣き出しそうな笑顔にかき消された。

「うんそうだよ。でもやっぱり骸クン知らなかったんだね…」
決定的な言葉を聞いたのがよほどショックだったのか、白蘭は背もたれの方へ体を向け、横たわったままうずくまった。

教えられてもいない誕生日を知らなかった事でショックを受けられるのは、少々理不尽な話なのだが、白蘭がきちんとホワイトデーのお返しを用意していた事を思い出すと、少しばかり罪悪感を感じた。
もっとも渡したと言うよりは、半ば無理やり奪われたに近いバレンタインだったのだが…。

何時までもいじけたままの白蘭に幾度目かの溜め息をつくと、白い髪にキスをした。ふわふわのそれは、白蘭の好物のましゅまろのように柔らかくほんのりと甘い香りがした。

不意に感じた熱と重みに顔を上げると、そこには口元を隠した骸の姿があった。

「骸クン…?」

不思議そうに問いかける白蘭に慌てて何時もの風を装う。

「まったく大の大人がそれくらいの事で何時までも落ち込むんじゃありません!それに誕生日なら来年も再来年もその先もずっとあるでしょう」

頬が火照るのを感じて、ふいと顔を背ける。しかし、白蘭にはしっかり見えていたようでにこりと笑った。

「それって来年も再来年もその先もずっと一緒にいてくれるって事?」

「違います!」

機嫌を取り直した白蘭が慌てて否定する骸に抱きついた。火照りの収まらない骸は必死にその腕から逃れようとするが、それを許す白蘭ではない。しっかりと抱き寄せられ、キスを落とされる。

「ね、骸クン。今年はまだ言って貰ってないよ?」

甘えるように見つめてくる白蘭から目を背ける。骸がその目に弱い事は白蘭自身も知っていた。

「…誕生日おめでとうございます」

背けられた頬が赤みを増した。

「えへへ。ありがとう」

心から嬉しそうなその笑みは、見た者もついつい笑顔になってしまうような幸せに満ち溢れていた。

「今日だけですからね」

骸もその例外ではなく、満ち足りた気分になり抵抗を止め白蘭の腕に身を預けた。
骸の頬はいくら不機嫌を装ってもやはり赤いままで、強く抱きしめた。この幸せが何時までも続くようにと願いを込めて。

「ありがとう」

そう言った白蘭は澄み切った海のように、それはそれは晴れやかに笑った。


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