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短編・詩
白骸 チョコの代償

時は2月14日バレンタイン。
世の男女が思い思いに甘い一時を過ごしている中、この部屋の住人である2人の青年には、全く関係のない話で…

「むーくーろークンチョコちょーだい♪」

というわけではなさそうだ…。

上機嫌な様子の全身真っ白な格好をした男は、自らが骸と呼んだ人物に飛びついた。が、腹に食らった肘鉄に阻まれそれは叶わなかった。

「酷いよー骸クン」

拗ねたように頬を膨らます男に、ソファで寛いでいた髪の長い青年は読んでいた本を閉じて睨み付けた。

「いきなり飛び付こうとしてなんですか白蘭!その上チョコを要求するなど言語道断です!」

睨み付けたその瞳は赤と青のオッドアイ。赤い右目には六道輪廻を司った証である六の一字が刻まれている。

「だってさー今日バレンタインだよ?」

「白蘭、貴方には僕が女性に見えるんですか?」

不服そうな白蘭の言葉に骸は呆れたように深い溜め息をついた。

「え?骸クン女の子だったの?」

白蘭は心底驚いたように目をまるくすると、まじまじと不躾に骸を見つめる。

「僕は女性でもなければ子供でもありません!」

「でも骸クン髪とか肌も綺麗だし女に見えない事もないよ?」

「貴方の目は節穴ですか!!」

白蘭の余りの言い草に堪忍袋の尾が切れたのか声を荒げる骸。
対して白蘭はいかにも楽しそうにニコニコとしている。
すると、何かに気付いたのか「あっ」と声をあげるとニヤリと怪しく微笑んだ。

「じゃあさ。僕が確かめてあげるよ♪」

いつもの笑みを貼り付けると、訝しげな顔をする骸をソファに押し倒す。

「ちょっ!白蘭確かめるってなにをする気で…」

真っ赤な顔の骸が全てを言い終わる前に、骸の唇は白蘭の唇によって塞がれた。

「だからさ。僕が骸クンが本当に男か確かめてあげるって言ってるの」

「ふざけるな!」

「僕は大まじめだよ♪」

ソファからなんとか逃げ出そうともがく骸の腕を、頭の上で一纏めにすると、何処から取り出したのか鈍色に光る手錠で拘束する。

「大丈夫痛くしないからさ」

耳元で囁かれた言葉に、熟れたりんごの様だった顔をサッと青ざめさせた。


あとには骸の声だけが部屋中に響いていたという…。

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