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―愛し君―

大切な大切な貴方が生まれた記念日。
ありきたりかもしれないけれど、貴方が今ここにいることに最大級の祝福と感謝をしよう。


伝えきれない気持ちはせめて。
プレゼントと共に、

君に届け。


―愛し君―


今、時計は11時30分をさしている。それはつまり今日という日があと30分しかないというわけで。


「はぁ…まだ帰ってこないし…」


僕は今、ラビの部屋でこの部屋の主であるラビの帰りを待っている。急に入った任務で、それでも今日には帰ってこれると聞いていたいたのに。
時計がどれだけ時を刻んでも、一向にラビが帰ってくる気配はない。
僕は部屋の机に突っ伏してふて腐れる。


今日は、特別な日なのに。“これ”は、今日じゃなきゃ駄目なのに…



「てゆーかラビも、せめて連絡くらいくれてもいいんじゃないですか?」


ついティムキャンピーをつついて、愚痴を溢してしまう。ただの八つ当たり。
今日に限らず、帰還予定日に帰ってこないと不安で仕方がないのだ。だからせめて僕は無事かどうかだけでも知りたいのに。

…たまに、思う。ラビにとって、僕はどんな存在なんだろうと。
名目上は、“恋人”。
でもその立場は、いったいどれくらい拘束力を持つ?
ラビの心を、思考を。いったいどれだけ占めることが出来る?



今の僕は、ほとんどラビで一杯なのに。
ラビがいるから、頑張れているのに。

あまり他人にココロを見せない人だから、本心がわからない。


「ま、だ…かなぁ……早く、逢いた……………」


今朝落ち着かなくてほとんど寝ていたかったせいだろうか。または普段あまり考えないようにしている事を考えて疲れたのか。急に強い眠気に襲われた僕は、ラビに逢いたいというただその一つだけを思って、そのまま意識を手離した。






「…んっ?…………あれ?」


気が付けば僕はベッドのなかにいた。上半身を起こしてあたりを見渡せば書類の山と二段ベッド…さっきまでいたラビの部屋で間違いないんだけど。


「僕、机で寝てたよね…?」

「ん?あぁ、アレン。…起きたんさ?」

「…ラ、ビ?」


久しぶりに見る愛しい人。といっても一週間程度のことなんだけど。
それでももう何年も逢ってなかったみたいな感覚に襲われて、嬉しくて嬉しくて仕方がない。

シャワーを浴びてきたのか、ラフな格好で僕のいるベッドに近付いてくる。


「ごめんな、遅くなって。アレン気持ちよさそうに寝ててさ。起こすの可哀想だし、かといってあのままじゃ風邪引きそうだったからベッドに運んどいた。」

「ありがとうございます。…おかえりなさい、ラビ。」

「ん。ただいまさ、アレン…」


ベッドに座って、僕の髪を優しく撫でながら存在を確かめるようにキスをして。
それだけでもう幸せで、あやうく本来の目的を忘れてしまうところだった。
ちらっと時計を確認すると、針は1時50分を示していて。


「………日付、変わっちゃってる…」

「日付?それがどうかしたんさ?」

「ラビ、もしかして忘れてる?昨日は貴方の誕生日じゃないですか。」

「…あぁ!そっか、昨日だったんか!」

「呆れた…自分の誕生日くらい覚えてましょうよ…。本当は昨日のうちに言いたかったのに…」

「ア〜レンっ。その気持ちだけで十分嬉しいさぁ。」


僕に甘えるように擦り寄ってきて、宝物を扱うかのように優しく抱き締めてくるラビ。その温度に安心して、ラビがいない間に感じていた不安が嘘の様に消え去っていく。

「…今回の任務、大変だったんですか?」

「ん?いや、そんなにキツい任務じゃないさ。本当は帰りももっと早かったはずなんだけど…イギリスの天気が悪いとかでなかなか移動できなくてさ。」

「………だったら、なんで連絡の一つもくれなかったんですか?」


つまりラビはとっくに任務は終わってたんだ。僕が不安でいた時も。わかってる。これは僕の勝手な考え。ただの我が侭だって。
…でも、止まらない。
さっきの感情が蘇ってくる。



「僕は貴方の恋人じゃないんですか!!?せめて、無事なのか連絡下さいよっ!!…僕がどれだけ不安だったと思って……っ!?」


ふわりと優しく抱き締められる。あやす様に髪を撫でられて。

そしてとてもすまなさそうな声で、囁かれる。


「ごめん。心配かけて。本当にごめんな、アレン。」

「…………い、いです。こうして今、ラビと一緒にいれるから。ごめんなさい、あんな事言って。…一日遅くなっちゃったけどラビ、誕生日おめでとうございます。この世界に生まれてきてくれて、ありがとう…」


ラビは不思議だ。僕の中のどんなに醜い感情でもあっという間に消し去ってしまう。
感情も落ち着いた僕は、自分の思う精一杯の最高の笑顔をラビに向けた。
おめでとうと、ラビがここに存在しているという奇跡に感謝を込めて。


「…そうだ。これ、プレゼントです。何にしようか迷ったんですけど…」


悩んで悩んで、僕が選んだのはラビの誕生石であるサードオキニスという石のピアス。
余りこういうものに詳しくないから喜んで貰えるか不安だったけど、どうやらそれは杞憂だったみたいだ。

だって今ラビはとても嬉しそうに微笑んでくれているから。



たくさんのキスを僕に注いでいくラビ。
突然声を何時もより低くして、僕の耳元で甘く囁く。


「な、アレン?もう一個、欲しいのがあるんだけど?」

「え?何ですか?」

「…アレンを、頂戴?」

「っ………!!!!」


多分、なんてつけなくても、僕の顔は真っ赤になっているだろう。でも結局ラビに甘い僕は、そのままラビに体を任せた。






次の日、妙に機嫌の良いラビと体が辛くて動けない僕がいたのは、また別の話…。



Happy Birthday Lavi!!



―End―


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あきゅろす。
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