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月が音を奏でる夜
007
それから、と言うもの、コンサートスタッフ達の行動は早かった。
椿姫達のフォローに入ったり、物販ブースへの搬入、曲順の打ち合わせ等など。
その様子を見守りながら、龍也はプロデューサーらしき男に話しかけた。

「一体、彼女達は何者なんですか?」
「え?」

きょとり、とした眼差しで龍也を見るが、ふ、と笑う。

「知らないの?彼女達は、完コピバンドのリトルラビットだよ」
「え!?リトルラビットって…あの、リトラビ、ですか!?」
「そう。あのリトラビ。で、仮面を付けてるのがスイレンだよ」
「彼女が、スイレン……」

音楽界で知らない者は居ない、リトルラビット。
どんな楽曲でも完全に弾き熟し、演奏されたその曲は再ブレイクする。
そんな曰くを持つリトルラビットに演奏して欲しいと願うアーティストは多い。
しかも、CDはインディーズだとは言えど、あのCMソングの女王とまで囁かれる超売れっ子作曲家【スイミー】と超売れっ子作詞家【ツクヨ】、この2人がプロデュースしているリトルラビットがここに居て、しかも、バックバンドを引き受けた、と言うのだから、驚きを隠せない。

「じゃあ、その並びで宜しく。それじゃあ、リハ演ろう」
「マジで、ボカロ演るんです?」
「頑張れー。サクラ」
「自信無いですぅ」
「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、だぞ。音は裏切らないから、ほら、行くよ。時間がないんだから」
「はーい」

ぱたぱた、と走り去る彼女達。
それを見送るスタッフと龍也達。

「スーちゃんと知り合いが居て良かったね」
「…はあ」
「嘉川さん!」
「じゃあ、私はコレで」
「宜しくお願いします」

軽く会釈を交わし、嘉川を見送った後、龍也は蘭丸達に近付く。

「お前らがリトラビ…しかも、スイレンと知り合いだったとは……」
「スイレン?」
「……仮面を付けた娘。あの娘が、スイレンだよ」
「へぇ…彼奴、そんな名前でバンド組んでたんだな」
「へ?ランラン、知らなかったの!?」
「……煩え」

その言葉に、一同沈黙。
何処でどう知り合ったのだろうか。
気になる所ではあるが、取り敢えず彼女達、リトラビの実力が知りたい、と思った蘭丸は、何かを聞かれる前に舞台袖へと向かった。



☆★☆★☆




舞台袖から見る彼女達の演奏に度肝を抜かれた。
ボカロの楽曲は、難しいのが多い、と聞いていたが、難なく弾きこなす。

「凄いね、彼女達」
「藍」
「完コピも伊達じゃないね」
「うむ」

どうやら、蘭丸と同じ事を考えていたのか、QUARTET NIGHTメンバーがその場に勢揃いしていた。



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