月が音を奏でる夜 004 「日向先輩に連絡したんだけど、今から探すとなると、難しい―――…って、そのガール達は…?」 奏音達に気付いた嶺二が蘭丸に尋ねる。 「―――――…バックバンド、してくれるってよ」 「ええっ!マジで!」 蘭丸と奏音達を交互に見つめる。 どう言う経緯での知り合いなのか、問い詰めたい所ではあるが、今はそれ所ではない。 取り敢えず、バックバンドを確保したいのが本音なのだ。 「リハ、演る?」 「スー、ちょっと待って」 「ん?」 「この曲順だと、バランス悪くない?」 「んん?」 奏音達の中で、1番背が高い少女がメモをマジマジ、と見ながら呟く。 「んー…弾き易さから言うと、こんなもんだけど…盛り上がりから言うと、欠ける、かぁ?」 「それだったら、こっちのコレを…」 「いやいや、それはダメですぅ。まだ、こっちから始めた方が……」 メモを手に、歌い手である蘭丸達そっち退けで、楽曲順の口論が始まった。 コレから始めると、中盤の曲に締まりが無くなる、だの、いきなりコレだと、流れ的にも可笑しいだの、まぁ、白熱した口論となりつつあった。 置いてけぼり、と化してしまった4人。 「まぁ、終わるまで話でもしましょ」 「……おい」 「大丈夫です。何時もの事ですし」 「い……何時も、なんだ?」 そう言って、スタッフ専用の椅子に腰を下ろした。 はあ、と溜息を吐き、白熱した口論を見守る事に決めた蘭丸は、「嶺二、日向さんに連絡しなくて良いのか?」と、一言告げる。 「あ!そうだった」 嶺二は慌てて、龍也に連絡をとる。 「一回リハ演ろ。演ってから、曲順変更したら良くない?」 「んー…それもそっか」 「ですねぇ。でも、楽曲増やさないとダメかも知れませんよぉ」 「え、あ……時間、か!」 潰しの洗礼をした以上、ライブ時間に関しても何らかの仕掛けがあると推測したようで。 くる、と奏音が振り返ると、 「黒崎さーん」 「ん?」 ぱたぱた、と駆け寄って来る奏音の姿に、 [[ダックスフントみてぇ(みたい)]] [[マンチカンみたい]] と、それぞれ思ったのは、言うまでもなく。 「ライブ時間って何時から何時まで?」 「開場は午後5時で、開演は午後6時から終演は9時の予定だな」 「ライブ時間は妥当か。でも、それじゃあ、この曲目だけじゃ完全に足りない」 「ん?」 「トークを入れた、としても、時間が余る」 奏音の言葉に、蘭丸はもう一度、曲名を上げて確認する。 さぁ、と、血の気が引いた音が聞こえた気がした。 「マジかよ……」 「ライブ構成にも仕掛けるかぁ…。面白い事やってくれるねぇ」 ダン! 再び、奏音が足を踏み鳴らす。 「あーあ…スーちゃん怒った」 「?」 「スーちゃん、怒ると足ダンするんですよ。判り易いでしょ」 クスクス、と笑って何度か足ダンする奏音を見つめる。 [*前へ][次へ#] [戻る] |