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短編小説
カノジョのキモチ 前編(黒崎蘭丸)
とある喫茶店。
カランカラン、と、来客を告げるドアベルと店員が招く声が聞こえる。
普段なら、事務所にて打ち合わせをするのだが、ランチがてらしよう、と話が纏まり、この喫茶店に来ていた。
この喫茶店は良く利用するのか、店員と仲良く喋るのは、ST☆RISHの神宮寺レン。
今度、レンと出演する化粧品のCMについて、何方を選択するかによって、共演するタレントが変わるらしい。
「パッションルージュ。小悪魔の誘惑、天使の悪戯」と書かれたパンフレットを指先で弾く。

「そう言えば、ランちゃんって“彼女”居るんだっけ?」
「あ?」
「宣言してたでしょ?彼女居るって……」
「あぁ……。後からバレてスキャンダルになるより、最初から言ってあった方が良いだろ」
「スキャンダルは芸能人――――……アイドルにとって致命的だからね。ランちゃんの選択は間違ってないと思うよ」
「レン」

レンの眼差しを避ける様に、ふぃ、とガラス越しに映る景色に視線を送った。
幼い時から知っているレンだからこその励ましである、その事が判っているから、照れくさい。

「ん?」

視界を掠めるソレ。
ソレに向かって視線を送れば。

[七海と渋谷だったか?ソレに……、奏音!?何でココに…ッ]

内心焦っていた。

[確か、今日はオフで友達と出掛けるとか言ってたが…]

ぐるぐる、と思考が混乱し始める。
スイレンがオフのみ、素顔でいる事は知っていたが、まさか、春歌と友千香がスイレンの素顔を知っているなど、思ってもいなかったのだ。
 
「こちらにどうぞ」

店員に導かれるままに、席に座る3人。

「はー、アレンジクラシック楽しかったねぇ」
「はい。楽しかったです」
「まさか、Swimy(スイミー)から誘われるなんて、感激です」

どうやら、クラシック演奏会を聴きに行っていたようだ。

[オレも予定を聞かれたが……。コレか]

これで納得した。

「ランちゃん?」
「何でもねぇ」

自嘲気味に笑う蘭丸に、怪訝そうに眉根を寄せる。
そんな二人を他所に、彼女達の話が自然と耳に入って来る。

「彼氏さんと来なくて良かったんですか?」
「ん。ら……、あー…彼は打ち合わせしてるからね」
「そう言えば、聞きましたよ?」
「ん?」

クスクス笑いながら、友千香は奏音を見る。

「Ptラッシュの古谷くん、フッたんですよね?」
「……早いね。情報」
「ええっ。ほ、本当なんですか?!」
「彼氏居るし、彼奴の音、好みじゃないし」
「彼奴、女グセ悪いって有名なのよ、春歌。フラレてざまあって思ってる人多いんだから」
「へぇ……。知らなかったです」

[聞いてねぇぞ、そんな話ッ!]

何分、ミステリアスベーシスト、素顔さえ見せない作曲家として有名な奏音。
それ故なのか、奏音を狙っていると言う男達は数知れず。
何時もは、QUARTET NIGHT、ST☆RISHのメンバーや音響スタッフが傍に居て、リトラビメンバー(特にスイレン)に近付けさせない様にしていたのだが、居ない時を狙って近付いて来ている事が判った。

「そんな事より、春ちゃん。曲出来たかい?」
「はい。要約」
「ギタリスト泣かせの曲は止めなね。流石にアレは無かったぞ」
「ごめんなさい」
「話、逸しましたね。ダメですよ?」

友千香の迎撃はまだまだ続きそうで。
蘭丸とレンは、御愁傷様、と内心呟いた。

――――――――――――――――――
あとがき

嵐の予感

2021.04.07

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