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短編小説
脱走ウサギを捕獲せよ!!(ST☆RISH)
「何です?この札」

手渡された札を見ながら、訊ねて来るのは一ノ瀬トキヤ。
しかも、自分だけが渡された訳ではなく、札を持っているのは、来栖翔、聖川真斗、神宮寺レンの3名。

「捕獲担当札、だってよ」
「捕獲……。ああ、スイレンさんですか」

捕獲、と言われて気付く。
何時もスイレンを回収する、QUARTET NIGHTのメンバーは仕事にて居ないのである。
居ない事を知ったスイレンが、スタジオに引き籠もってしまった。
そろそろ回収しなければ、スイレンが倒れてしまう。
だが、QUARTET NIGHTが居ない中、自分達がスイレンを捕まえる事が出来るのか、イマイチ、不安ではある。

「那月、その表情止めろ」
「スイレンちゃんを抱っこ出来るんですよ?羨ましいです」

少し拗ねた表情を見せるのは、四ノ宮那月。
可愛い物好きで、直ぐに抱き締めてしまう。
それを知っているスイレンは、那月にはなるべく近付かない様にしていた。

「ま、スイレンが脱走しなければ良いだけの話だが……」
「そうもいかないのが、スイレンだよ」

等と話していると。

「ウサギ脱走!!捕獲班、出動せよ!!」

館内アナウンスが聴こえた瞬間、ここにいる全員が盛大な溜息を落としたのは言うまでも無かった。



☆★☆★☆




すばしっこいスイレンを追いかけ、階段を上っては、下る。
確か、スイレンがスタジオに籠って丸々3日経っている筈。
それなのに、これだけ動け回れるなんて……。
そんな体力が何処にあるのか、不思議で堪らない。

「なんてすばしっこいんだ!!」

真斗が正直な感想を述べる。
油断すると、視界からその姿を消してしまう。
挟み撃ち出来ないか、と考えていた矢先。

「聖川さん!スイレンさんは……!」
「そっちに向かった筈では……?」
「こっちには来ていません」
「東館では無いとなると、神宮寺の所か……」
「とにかく、隅々まで捜しましょう。見つからなければ、大変な事になりそうですから」
「そうだな」

見つけられませんでした、では話にならない。
それに、スイレンは眠くなると、所構わず寝入ってしまうのだ。
そうなれば、スイレンは飢えた狼達の餌食になってしまう。
そして、スイレンを妹の様に可愛がっているQUARTET NIGHTの怒りを買う事になる。
それだけは避けたいのだ。

「トキヤ!!ウサギは!?」
「こっちには居ない」

フル、と首を振る2人に、盛大な溜息を落とした翔とレン。

「どこ行ったんだ!!」

この館から出ていない筈。
すると、使われていない部屋に忍び込み、寝入ってーーー……。

「♪」

そんな中、電子音が鳴り響く。

「ちょっと、ゴメン」

ディスプレイに表示された名前は『黒崎蘭丸』
嫌な予感がしなくもない。

「出るしかないね……」
「……そうですね」

小さく溜息を吐くと、通話ボタンに触れた。
勿論、スピーカーにする事は忘れない。

『遅ぇ』
「ゴメンゴメン。で、どうかした?」
『どうかした?じゃねぇ。お前ら、何やってんだ』

嫌な予感がする。

「まさか……」
『ウサギは捕獲した。お前ら、事務所に戻ってろ』
「……マジか…」
『説教だから。それじゃあね』

藍の言葉に、項垂れる。
スマートフォンから聞こえるのは、電子音のみで言い訳など聞く耳持たない、と言われている様なもので。

「はぁ……気が重い」
「「「同感」」」

気分はドナドナ。
QUARTET NIGHTのメンバーが怒ると怖いのだ。
藍は理屈で責めてくるし、ブリザードを吹き巻きながら冷たく言葉を発するのはカミュで、鋭い眼差しで竦み上がらせるのは蘭丸で、ニコニコ笑いながら怒るのは嶺二で。

「事務所に戻りたくねぇよ」
「仕方ないよ。スイレンが逃げ出したルートを割り出せなかったオレ達に責任あるし」

そう言いながら、重い足を動かした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あとがき

何時もスイレンを捕まえるのはQUARTET NIGHTのメンバーの役目なんです。

2021.04.05



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