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短編小説
君の声が聴きたくて おまけ(黒崎蘭丸)
何とか、バスロケ収録を終わらせた3人。
ロケバスに乗り込み、帰路に着く。
勿論、奏音が喜びそうな土産も手に入れた。

[喜んでくれると良いが……]

偶然、通り掛かったオルゴール館。
其処に立ち寄り、ブラリ、と中を散策すれば。
自分達の曲がオルゴール化されているのに気が付いた。
しかも、その横には、

“世界で1つだけのオルゴールを作りませんか?”

のポップ。
すぐさま、店員に話を聞きに行き、簡単に作れます、と言う言葉に促され、オルゴールを作成し始めた。
それに釣られてか、レンや真斗までもが、オルゴール作成に取り掛かったのは言うまでもないが。
初めて作るオルゴールに四苦八苦しながら、何とか完成する。
奏音の喜ぶ顔が目に浮かぶ。

「ん?」

チカチカ、と、何かがスマホに通知されたのだろうか。
ライトが点滅している。
ロックを解除し、確認すれば、ユーチューブの通知。
イヤホンジャックを挿し込んで、周りに聞こえない様に視聴する事にした。


☆★☆★☆



「みなさん、こんばんはー。アザミだよ」
「サクラですぅ」
「今日は、スーちゃんの部屋に突撃したいとぉ、思います!」

リトラビは、ユーチューブも開設していて、毎日と言って良い程、動画配信している。
どうやら、今回の配信者はアザミとサクラ。
撮影や編集は、誰がしているのか不明だが。
まあ、彼奴等の事だから、信用のおける人物に頼んでいるんだろうが。

「それでは、そーっと入りますねぇ」

カチャリ、と静かにドアを開ける。
進んで行くその先に、ソファに腰を降ろし、うさぎのぬいぐるみを抱きしめ、電話をしている奏音の姿が映る。

[電話……オレとしてた時か]

そんな事を思いながら、見続けていると、

「……おやすみなさい……大好き。ちゅっ」
「!」

あの時、もう1度聞きたい、と思っていたセリフが、耳に届いた。
通話終了後、スマホを胸に押しあて、頬を赤く染めて、何処かしら幸せそうに微笑んでいる奏音が映る。

「ん…?」

ぱちっ、と、画面の中の、奏音と視線が合うと、ボンッ、と、音を立てて顔を真っ赤に染め上げ、ジタバタ、と、暴れ始めた。

「きゃー、スーちゃん、カーワーイーイー」
「何処が!!てか!いつの間に…ッ!」
「今の間ですぅ。旦那さんに電話ですかぁ?」
「だっ……!違……ッ!バカッ!!」

ボボンッ、と顔をより一層真っ赤にしているその態度は、間違いなく彼氏と電話していた、と言う事を表していた。
どうやら、リトラビは奏音の彼氏―――……蘭丸の事を影で“旦那”と呼んでいる事が窺えた。
まあ、奏音に彼氏がいる事は公表しているので、旦那、と言われても仕方がないが……照れる。

[説教、と思っていたが……彼奴等にはケーキでも買って帰ってやるか]

見たい、と思っていた奏音の姿を目の当たりにして、朝から不機嫌だった気分は何処へやら。
一気に機嫌は急上昇。

「……ど、何処から聞いてたの?」
「おやすみなさいから、最後のちゅー」
「寄りにも寄って、ソコか!!」
「スーちゃんの照れてる姿は、Sレア」
「撮らなくて良いから!絶対に、動画は配信しちゃダメだよ?」

テロップには、配信しました!の文字が踊る。

「誰が見たがるの!こんなの」
「いやぁ、スーちゃんの恋愛事情は知りたい」
「知らなくて良いから!」
「……あの、スーちゃん、そのうさぎのぬいぐるみ、普段から良く抱きしめてますよね?」
「へ?」
「旦那さんからのプレゼントだったりして」

その言葉に三度、ボンッ、と顔を真っ赤に染めた。

「図星」
「逢えない旦那さんを思って、ですかぁ。青春ですなぁ」
「バカぁっ!!」

涙目になって、睨み付けてくるが、威力は0に等しい。

「……うぅ……言いつけてやるんだから」
「あはは。誰に?」
「拗ねた」

ぎゅう、と音がするぐらいぬいぐるみを抱きしめているので、拗ねているのは間違いない。

[やっぱ、説教ありだな]

そう思いながらも、最後まで視聴する。
コメント欄には、

“スーちゃんの、彼氏さん羨ましい”
“電話越しのちゅー、かわいい”
“スーちゃんの彼氏はあの人…?気になる”

中には、

“リア充爆発しろ”
“妄想乙www”

ともあったが、返信欄で叩かれていたので、放置する事にした。
こう言うユーチューブにはアンチ、と呼ばれる人種がいる。
相手にしても仕方がないので放置が1番だ、と椿姫が言っていたのを思い出した故の行動であった。
とにかく、早く寮に着いて欲しい。
土産を見つめてそう思う蘭丸であった。


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あきゅろす。
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