短編小説
イタズラ (QUARTET NIGHT)
「やられた……ッ!!」
わなわな、と、肩を震わせて机を睨み付ける少女。
名は、蓮水奏音(はすみかな)と言う。
リトルラビット(略してリトラビ)と言うバンドを組み、スイレン、と言う芸名でデビュー。
10代から20代に人気で、バンドメンバーのマスコットまで売り出されている。
「どうしたんですか?」
怒りオーラを漂わせ、机を睨む奏音に、恐る恐る声をかけるのは、メンバーのサクラ。
「あンの、クソ親爺!!ボクのお弁当、持って行きやがったッ!!」
スイレン手作りのお弁当。
メンバーには、好評でこうやって集まる時には必ず、と言って良い程、持って来るのだが、何処から聞きつけたのかは知らないが、シャイニング事務所代表である、シャイニング早乙女に狙われていた。
無論、この事もシャイニング事務所の名物と化しており、社長VS所属タレントが繰り広げられていた。
それ故、警戒していたのだが、この頃姿を見せない為、安心していた。
それが甘かったのだ。
「しかも、代わりに持って来たのは、ハンバーグ特盛…ッ!!」
「あぁ……」
「嫌がらせにも程があるぞ!!」
スイレンの言葉に同意を示すメンバー達。
「おい、お前ら、静かにしろ」
楽屋の壁にもたれ、冷ややかな眼差しでメンバーを見るのは、事務所の先輩でもあり、リトラビの兄代わりでもある、黒崎蘭丸。
そして、きょとり、とした眼差しを向けている美風藍。
「騒がずには居られるか!!ボクのお弁当持ってかれた!!」
「あ?」
「へぇ。スイレンのお弁当、をね……」
スイレンの手作り弁当は、何もリトラビメンバーだけの物ではなく。
他のメンバー達も楽しみにしていた。
「少し待ってろ。取り返して来てやるから」
「ランマル、多分食べられて、もう無いよ。スイレン、今日は何個作って来たの?」
「これだけしかない」
机に拡げられたのは、5段重一包みとハンバーグ弁当のみで。
「先着順、って所か……」
「そうだね。早く食べちゃおっか。レイジやオトヤが来たら、大変な事になるから」
辛うじて難を逃れた弁当にありついたメンバー達。
これからは、スイレン印の弁当を魔の手から死守する為、どうするか、と言う会議が繰り広げられた。
☆★☆★☆
スイレン印のお弁当強奪事件から、数日後。
「あっはははは!!」
「スイスイ、サイコーじゃん!!」
「……フフッ、カミュ、笑いたいたら、笑いなよ」
「…ッ」
シャイニング事務所では、爆笑が渦巻き、スイレンは得意気に笑っていた。
一方『早乙女学園』では。
「あはははははッ!!」
「学園長が、バカ○ンのパパッ!!サイコー!!」
シャイニング早乙女の銅像に群がる生徒達が、爆笑し、インスタに上げる、と言う負の連鎖を生み出していた。
それもその筈。
ポージングをしている銅像に、衣装を着せ、カツラに、特徴のあるヒゲで描かれている。
そして、それはシャイニング事務所にある銅像も着ているのだ。
しかも、コチラはバカ○ンのパパではなく、バカ○ンである。
しかも、銅像だけではなく、シャイニング早乙女の顔写真全てが、バカ○ン一家になっていた。
「スイレン!!」
「ボクのお弁当盗るからだい」
フン、と鼻息荒くそっぽを向くスイレン。
弁当強奪が、この様な事態を生み出すとは、思っても見ない早乙女であった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あとがき
こんな風景もあるかなぁ、と。
2021.04.05
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