dragon night 007 いつき、と呼ばれた少女を見ると、でんわ、と云う言葉に何度も首を傾げていた。 「で……電話を知らねぇ、だと……」 ぐるり、と、周囲を見回す。 周囲にある物は、まるで、時代劇に出て来る様な古民家である。 「なぁ」 「何だ?」 「今は令和だよな?」 「れいわ?何だ?それ」 話が通じない。 令和じゃないのか? まさか……。 「今は、何年だ?」 「今は―――…」 いつきから紡がれる言葉は、蒼依を絶望の淵へ、と導いた。 ◇◆◇◆◇ 「マジか……」 周囲を見ても、知らない物ばかりだし、いつきや村人らしい人物達が着ている服を見れば、否が応でも、トリップした現実を突き付けて来たのだ。 あのガキさえ追いかけなければ、こんな目に遭わなかった。 あのガキ、見つけたらぶっ飛ばす。 と、思うものの、見つけ出す事の方が難しいかも知れない、と、考え直し、小さく溜息。 「過去に来たんだから、未来に…元居た時代に戻る事も可能……か」 ポツリ、と、呟く。 [なるようになる。望みは棄てるな] 脳裏を過ぎった言葉。 その言葉が、蒼依を奮い立たせ、瞳に強い輝きが甦ったのだった。 [*前へ] |